第1回





●新手のコスチュームショップ





   
 昔は暗く怪し気な雰囲気でとても入りずらかったアダルトショ ップやコスチュームショップが、今では明るくオシャレな雰囲気 の内装へと変貌し、女性でも気軽にキャーキャー言いながらエッ チなグッズを安心して買えるようなお店が増えてきた。  秋葉原、上野などではビル全体がデパートのように各階アダル トグッズで埋め尽くされ、堂々と商売している企業まで出てきた。 一階はガラス張りのオープンウィンドーで、一瞬、小ジャレたブ ランドの服でも売ってるのかと、思わず入ってしまいそうな作り だったり。目をひくように大きなオブジェがあったり。店員達は 可愛くセクシーで、超ミニのボディコンで対応したりとか。  とにかく、オシャレに目立ち、買い易くをコンセプトとした店 鋪設計がなされている。  俺の地元、吉祥寺でもその波が訪れたのか、人通りの多い路上 に「コスチュームショップ」と書かれた看板を見つけた。  さすが吉祥寺、時代の波 に敏感じゃねーか。ちょう ど暑くて汗もかいてるし、 クーラーの効いた店内でエ ッチな下着でも見ながら涼 しむのも悪くないし…。し かも、こんな家の近くで可 愛い店員さんとか中にいた ら、俺はもうムフフフ?  と、ワクワク踊る心を弾 ませながら、早速その店に 突入してみることにした。  その店はどうやらビルの 4階にあるらしく、エレベ ーターに乗りその場所へと 向かった。行ってみるとイ メージとは裏腹に表札も何 もない扉があるだけで、ホ ントにここでいいのかよ? と戸惑ったが、半信半疑で インターフォンを鳴らすと、 無愛想で殺伐とした雰囲気 の野太い男の声が響いてき た。 「ハイッ…。なんですか……。お客さんですかぁ?」 「ええ、まあ、一応そうですが。看板見て来たんですけど…」  なるほどね。最近はこういった雑居ビルの一室をオシャレなカ フェとかに改装した店も多くあるので、ここもそうに違いないと 自信を持って勢いよくそのドアを開けた。  ところが、ム〜ンとした空気が室内から押し出され、俺の期待 を一瞬にしてブチ壊すかのごとく、目の前には汗をダクダク流し た怪し気なオッサンが靴下のままで立ちふさがっていた。  店内は人が一人やっと通れるぐらいの狭い通路の両サイドに天 井からビッシリとコスチュームが掛けてあるだけだった…。  なんじゃい、この店は! つーか、ただの倉庫じゃねーのか。 一応、奥に広いスペースがあるようだが、オッサンと掛けてある コスチュ−ムが邪魔で中がまったく見えねーよ! こんな店をイ メージして入って来たんじゃねーんだよ。  と、ガッカリしてるヒマもないほど早く、苛ついた顔のオッサ ンが仁王立ちしたまま問いかけてきた。 「今日はどういった物を買いに来たんですか?」 「え…えーと、特にないというか、どんなコスチュームが置いて あるのかなーって思って入ってみただけなんですけど」 「ああ…。そういうひやかしのお客さん多いんだよね」 「いや、あの…気に入った物があれば買いますけど」 「さーて、どうでしょうね……」 「え、ダメなんですか? 入れてくれないんですか?」 「ええ、帰ってください。買う物が決まってから来てください」  そう言って結局店内には入れてもらえず、ドアを閉められガチ ャリとカギを掛けられた。  つーか、二度と来るかっ、ボケが!! 時代に逆行してんじゃ ねーよっ。  俺は透視能力なんて備えてねーんだよっ。店内も見ないで買い たい物なんてわかるわけねーじゃねーか。  ということで、白い犬はいじめるな。