第4回




西荻の貴婦人ワンマンショウ


 
「ふざけんじゃねーよっ! ナメんじゃねーよ、こっちに戻っ て来いよっ! 謝れよ、チクショォォォォォ!」  夕方、西荻窪で人を待ってると駅前の歩道に座りこんでいるオ バサンが、ひとごみに向かって罵倒を浴びせてました。その場所 から1ミリも動こうとしないオバサンは今度は鞄から携帯を取り 出し誰かと話し出しました。烈火のごとく電話の相手に現状を伝 えているのを聞いていると、どうやら歩行中に自転車と接触して 転んだ時に足を痛めて動けなくなったらしく、突き飛ばした奴を すぐに見つけ出しここに連れて来いという無茶な注文を延々と繰 り返し話してました。  それにしても、その場所はコンビニの入り口前だし人通りも多 くバスや乗用車も頻繁に通るところなので、みんな迷惑そうな顔 をしながらそのオバサンを避けて通っていたが、たまに親切そう な人が、大丈夫ですか、救急車を呼びましょうか、とか言って問 いかけたりしても、首をゆっくり横に振るだけでその場所から動 く様子はなく、まるで自分の部屋にでもいるようなリラックスし た態度で電話をかけ続けていた。  しばらくすると警察官が2人ほど到着し、通行の邪魔にならな いようなところで休むよう促したが警察官の顔も見ようとせず、 一点を見つめながらひたすら頑固に座ってました。  梓みちよかよ! と突っ込みを入れたくなったが、だんだん見 てるのも飽きてきたし待ち合わせの時間がせまってきたので改札 の方に行こうとすると商店街の住民らしき人達が数人で座りオバ サンについて会話してました。通りすがりにそっと耳を傾けると 恐ろしい事実が分かりました。何とあのオバサンは昼の1時から 夕方までずっとそこに座っているらしく、身なりが小奇麗だった ため気が付かなかったが、最近よく商店街に出没するようになっ たプチ浮浪者で、しかも誰かと話しているはずの携帯も電源が入 ってないということでした。