第10回




最も下品な遊技





 電車に乗っていると携帯のメール打ちに夢中になっている女子をよく見かけるが、危険だねあれは。画面に集中するあまり背後がスキだらけだよ。ぶっかけ営業されちゃうよ。
 ぶっかけ営業とはその名のとおり、街中にいる気にいった女子の衣服とかに精子をかけるというマニアックでデンジャラスな遊技だ。もし捕まった場合は器物破損という罪に問われる。
 一撃必殺の生かけ派と連射がきく注射器派に分かれるが、特質すべきは注射器派。彼らはカメラのフィルムケースの中に自分の精子を出し、それを貯蔵したものをポケットまたは鞄に入れていつも持ち歩いているそうな。
 で、適当なターゲットを見つけるとフィルムケースからそれを100円ショップとかで売っている注射器で吸い上げ、背後からこっそりと接近し気づかれないようにピュッとぶっかけその場を去る。まさに必殺仕事人。
 彼ら仕事人は、すこぶるポジティブな思考と豊かな想像力の持ち主なので、スカートやジーパンなどの衣服だけじゃなくターゲットとする女子の持ち物すべてが的になる。
 たとえばターゲットが自転車通勤の場合、そのサドルにも営業をかけてくる。量にもよるだろうが営業かけられたことを気づかずにターゲットが座ってその場を走り去った場合は、スカートにだんだんそれが染込んでいく様を想像して喜び、座る前にサドルに付着した液体に気づいた場合は、それが何なのか指で触ったりして匂いを嗅いでいるところを遠くから観察して喜ぶ。
 また、友達が近くにいた場合なんかは「何これぇー! くさーい!」。などと悲鳴をあげることもあるだろうが、仕事人にとっはそのリアクションがまた堪らなく興奮するらしく、その光景をネタにしてさらに貯蔵を増やすというシステム。
 少し前だが俺のまわりでも数人の女子がぶっかけ営業にあった。後ろ髪にちょろっとかけられたり、自転車のハンドルに塗られたりとか。なかでも一番かわいそうに思ったのは、ジャケットの腰から肩にかけて一直線に大量にぶっかけられた子。あれはきっとフィルムケース一本分を使いきったに違いない。
 ということで良い子は真似をしないように。