第15回






 前回の理不尽な事故で思いだしたけど、なにも、ああいった人があまり経験しないような出来事は初めてじゃない。なんでか知らないけど昔から車に乗っていると、いろいろな事に巻き込まれた。
 ということで、ここからはそんなエピソードを少し紹介しよう。


●ヒッチハイク  -part1-


 セドリック430ターボブロアム。オレが当時学生の時、実家から武蔵美までの通学にほとんど私物として使っていたオヤジの車だ。この頃は遊ぶことに命を掛けてたようなもんで、学校が終わってからも飲み会やパーティーなど毎日が宴のような楽しい日々で、どこへ行くにもこの車で行動していた。
 そんなある日、いつものように友達達と騒ぎ解散ということになった。帰る方向が一緒の女子がいたので国分寺から高円寺までちょっと寄り道になるがその子の家まで送りとどけた。真夜中だったので車は空いていたけど、まだ酒が残っていたので注意しながら今度は自分の家へと青梅街道を爆走した。阿佐ヶ谷を過ぎたあたりで信号で停止。青になり走りだろうとすると、なにやら50メートルほど前方、道のど真ん中に人が一人立っているのが目に入った。

「え、なんだろアレ? なんか右手に長い棒のようなモノ持ってるし、え! もしかして検問?」
  
 一瞬にして全身にいやーな感じが走り血の気が引くのがわかった。ちょーど脇に逃げる道もないし強行突破するにも長い棒で叩かれるかもしれない。と、それほど酔ってないこともあり覚悟を決めてその男の近くまでゆっくりアクセルを踏んだ。すると、どんどん近づくにつれてその男の風貌がハッキリわかった。

「ていうか、警察官じゃねーじゃん! ヤクザ‥‥?」 

 オレが警察の制服だと思っていたのは黒っぽいヤクザファッションで髪型は短いパンチパーマ、体格は190センチはあろうかというような長身で、しかも筋肉隆々なデブ。右手に硬そうな長い棒を持ったまま仁王様のようなポーズで左手を前に突き出し、鬼ような形相でオレの車の前にそびえるように立ち塞がり停止を呼びかけていた。
 また違った物質のホルモンが身体に分泌され、オレは固まるように車を停止した。
仁王様はボンネットに手をついて凄むように何かを喋っていた。オレに何の用事があるのか全然わからなかったので、とりあえずウィンドーを下ろし話を聞くとこにした。

「あのよォー兄さん。ちょっと頼みがあるんだよ。さっきまで酒呑んでたんだけどよォー、帰りのタクシー代まで呑んじゃってよォー帰れねーんだよ。だからよォー、三鷹まで乗せてってくれねーかな?」

 仁王様は眉間に皺をよせながら半強制的にヒッチハイクをしてきた。しかし、飲酒検問じゃなかったということで少しホッとしたこともあり、ヤクザのような風貌とはいえ相手は1人。しかも三鷹ならよく知ってるし家からも近いということで少し恐かったけど、

「ああ、いいですよ」

 軽く返事をしてドアのロックを開けた。すると仁王様は満面の笑みを浮かべながら左手を高くあげ歩道に向かってこう叫んだ。



「おーい! いいってよォー! 乗せてくれるってー!」



 エーーーーーッ!??? 1人じゃねーのかよ!!!

 運転席からあわてて後ろを振り返ると、やはり同じようなテイストのファッションにパンチパーマという方々が暗闇の中から走って現れ問答無用に車に乗りこんできた。
 予期せぬ出来事に恐る恐るバックミラーで確認すると合計5人がオレの車にいることがわかり、一瞬にして車内の空気が淀んだ。

「いやー兄さん、外は寒かったよー。あったかいねーこの車」

 リーダー格であろう、やはりガッシリした体格の男は助手席に乗りタバコをふかしながら明るくそう言った。5人の中でも圧倒的にでかい仁王様は不満気な顔で後部座席奥に窮屈そうに座り、右手に持ったままの硬そうな長い棒が、また、オレにプレッシャーをかけた。
 こうして、真夜中に見知らぬガラの悪い男達を5人も乗せて、オレは三鷹まで定員オーバーでドライブすることになった。

 とにかく無事に、無事に家に帰りたい‥‥。


つづく