●ヒッチハイク -part2-
ただ、それだけを考え道中は場の雰囲気を悪くしないように気づかい自分を盛り上げ、ハイテンションで喋りまくり5人に溶け込む作戦をとった。
作戦は吉と出て、和やかなムードのまま吉祥寺に近づいた。その頃には5人の年齢とか上下関係などが話しのやりとりから大まかだけどわかり、仁王様はやたらと助手席のリーダー格のことを気づかい、しかも「超クン」と呼んでいることに気がついた。
「ん? なんか聞いたことある名前だなー。三鷹で超クンでしょ‥‥。え?‥‥‥‥、それって、もしかして、超3兄弟?」
思い出した瞬間オレの身体は更に緊張し氷ついた。当時、三鷹をシメていたのは、超3兄弟という凶暴な兄弟で数々の武勇伝を噂で聞いたことがある。助手席にいるのはその次男の可能性があった。
「流石、超クン。有名だねぇー」
仁王様の横でゴミのように重なって座ってる3人の誰かが機嫌をとるように答えた。
オレは、すこぶる危険な状態にあることを再確認した。一歩間違えば、死?‥‥。
そんな恐怖が脳裏をよぎったが、とにかく会話が途切れて気まずい沈黙があかないよう普段あまりやらないようなギャグまで披露し笑いをとり、全力で男達に溶け込もうとしている自分がいた。
「がはは。兄さんノリがイイねー。んじゃ、ちょっと寄り道して吉祥寺をパトロールして行こうか。悪い奴がいたら懲らしめちゃおうよ。じゃあそこ、サンロード入って」
超クンは無責任に夜間、車両進入禁止のアーケードに入るよう指をさした。サンロードは夜中ほとんどの店が閉まっているがカップルや酔っぱらいなど、まだ人はたくさん歩いていて強引にそこを走るオレの車はどう見ても一番悪者だった。
「あ、ほら、兄さん悪い奴がいるよ。あんなミニスカートの女連れてさ、得意げに歩いてるよ。ムカツカない? ちょっとあの男、轢いちゃってよ」
超クンのいう悪い奴とは単に女を連れて歩いているだけの普通の若者だった。しかも当然、通行人を轢くことなんてできるはずもないが、
「やっちゃいますか!」
そういってオレはハンドルを急速に切りカップルに向かって突進し、ぶつかるギリギリのところでまたハンドルを戻した。カップルは悲鳴と共に大きく身体をのけぞって車をよけ白い目で寿司詰め状態の車内を見たが、超クンや仁王様の視覚的圧力に気づき文句を言うことなく逃げるように去っていった。
「がははは。兄さんやるねー。ノリノリだねー!」
車内は大いに盛り上がりオレもこの状況を楽しんでいた。そして吉祥寺中のカップルを追いかけまくり危険行為を繰り返し、女の子だけのグループには頼まれてもいないのに手当りしだい声をかけナンパした。
「ねーねー乗ってかない? トランクしか乗れないけど」
ナンパというか、まるで人攫いのようだった。いつ警察に通報されてもおかしくない、そんな状況だったが不思議と怖くはなかった。
しばらく巡回しているとオレの車を見ただけで悪い奴も女の子も逃げていったので、吉祥寺のパトロールは終わり、また三鷹へと向かった。
その頃にはオレもすっかり5人に馴染みちょっとした仲間意識さえ感じた。
三鷹駅は近くに武蔵野警察署があるので飲酒プラス定員オーバーの状態で通るには少しリスクがあり大通りをよけて裏道を走った。
つづく
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