第17回





●ヒッチハイク  -part3-





 裏道は住宅街なので薄暗く静まり返り人陰もなかった。オレは流石に喋り疲れ、彼らも騒ぎ疲れたのか車内は始めて静かになり沈黙が走った。目的地は目の前だし彼らはそんなに悪い人じゃないと判断したオレは安心してそんな沈黙も気にならなくなっていた。
 無言のまま走行していると、後ろから咳払いとともに仁王様が沈黙をやぶり少し言いずらそうな感じで口を開いた。



「この車‥‥くれるかなぁ?」



 え!?‥‥‥‥。

「ふぅ〜、後ろは狭かったー。やっと運転席に乗れるぜ!」 

 仁王様じゃない後ろの誰かがそう言った。マ、マジかよ!‥‥。オレはその時、彼らの本当の目的がわかった。目当ては最初からこの車。三鷹まで乗せてってと言うのは単なる口実でオレを油断させる罠だった。さっきまで楽しそうに笑っていた超クンは窓の外を向いたまま黙っていた。オレはすぐに人の事を信用してしまう騙されやすい性格ということを思いだした。ヤバイ! ヤバすぎる!
 また頭をフル回転させてなんとか別の話しに持っていこうと頑張った。 
 
「またまたぁー。冗談キツイなぁー。というか何でまたオレの車を狙った訳?」

「ああ、たまたまだよ。車、奪おうと思って道路に立ったらよー最初に来たのが兄さんの車だったのよ。すっかり言うの忘れてたけど。いいじゃん、車ちょーだい!」

「なるほどねー。だから長い棒持ってたんだー。でも、やっぱアレでしょ? もし逃げようとしたらその棒をフルスイングして車壊しちゃったりとかしたんでしょ?」

「まーそういうことだな‥‥」

「それにしても、そんな長い棒よく落ちてたよねぇ? それって樫の木でしょ?」

「棒の話しはいいからよォー! 車くれよ、車!」

 仁王様は再び眉間に皺をよせた。もはやこれまでか‥‥。相手は屈強な男5人、戦うにも負けはみえている。しかし抵抗もせずに車盗まれたなんていったら家に帰れば鬼よりも怖い3人の兄者達に殺されるのは目にみえている。まして長兄ラオウが黙っているはずもなし。行くも地獄、引くも地獄。そんなことをボケーっと考えていた。
 すると、ずっと黙っていた超クンがようやく口を開いた。

「なーんてね! 冗談だよ兄さん、がはは。嘘だよ嘘。あ、そこ曲がったところで降ろしてくれる?」

「え? いいの超クン? 見のがしてあげんの?‥‥」

「ウルセーヨッ! 俺がいいって言ったらいいんだよ! おい、お前ら。兄さんにタクシー代払うぞ。有り金、全部出せ!」

「ヘイッ!‥‥」

 超クンの鶴の一声でどうやらオレは無事に家に帰れそうな雰囲気になった。5人はポケットの中をまさぐり超クンがお金を集めた。そしてオレの手を取り集めたお金を握らすように渡してくれた。

「じゃあコレ、ほんの気持ちだけだけどタクシー代。今日は楽しかったよ兄さん。また一緒にパトロール行こうぜ!」

「え、タクシー代なんていらないのに‥‥。でもまたパトロール行く時は誘ってくださいよ」

「ああ、それから、三鷹でなんか揉めた時は俺に言ってくれ。相談にのるぜ。それじゃあ兄さん、気をつけて帰れよ」

 そういって笑顔で車を降り、また、暗闇の中に5人は消えていった。オレは脱力感とともにしばらく呆然としていた。そして、ゆっくりと超クンに握らされた左手をあけタクシー代を見た。




 手の平には小銭がたくさんあり、数えると268円あった‥‥。




 ようやく一人になったオレは今日あった出来事を思い出しながら笑顔でアクセルを踏み自宅へと帰宅した。



おわり