第19回





●なにわナンバー  -part2-

 


 一応、地図を出してこのあたりが掲載されているページを探していると、後ろの車の助手席のドアがガチャリと開いて暴力団というか荒勢が出てくるのが見えた。左手には何故か白い紙袋を持って、のしりのしりとこちらに歩いてきた。あれあれ、あの紙袋は何なんだろう。少し不信に思ったオレは用心のため助手席のウィンドーを8センチほど開けて荒勢に聞いた。


「えーと、どこへ行きたいんですか…?」

 すると、荒勢はウィンドーの隙間から覗き込むように鋭い視線でオレの顔を見ると次ぎのように言った。


「あのなァ兄チャン‥‥。なにも、聞きたいっちゅうのんは、道やないんや‥‥」


 そう言った瞬間、メリメリメリッと丸太のようにぶっとい右腕を強引にウィンドーの隙間にとねじ込んできた。ヤバイ! と思った頃にはもう遅く、内側から指先でドアロックを外され手際よくドアを開けると勢いよく助手席に乗り込んできた。
 ええええ?!!‥‥。予期せぬ出来事に心拍数は早まり脳内物質ノルアドレナリンが噴出。地図を持ったまま不安と恐怖で固まっていると、荒勢は間髪いれず足もとに置いた紙袋の中からいくつかの白い箱を取り出した。

「兄チャンよォ、ワシが聞きたいっちゅうのんは、コレや!」

 得意気な顔で箱を開けると、中にはロレックスの時計、デュポンやダンヒルのボールペンと万年筆のセット、カルチェの財布などのブランド品が入っていた。

「どうや? 兄チャン。男ならこの価値わかるやろ?」

「ハ?‥‥ハァ‥‥‥」


「この中から気にいったもんがあったら、ナンボでもええから買ってくれんかッ? それを兄ちゃんに聞きたかったんや! さぁ、欲しいもん言うてくれや?」

「ええーッ!?。うぅ‥‥ん。え…えーと、特に‥‥‥欲しい物は‥‥‥ナイかなぁ」

「ああッ?? よう聞こえんかったで。あのなァ兄チャン、ワシらケツに火がついとるんや。今日中に、どうしても、60万必要なんや。これで60万稼がんとなあ、明日には首くくらなアカンねや。なッ、ワシら助ける思うて買うてくれや!」

「‥‥‥‥‥‥」


 嫌な予感は適中した。まさか、こんな昼間に車内で押売りに遭うとは夢にも思ってなかった。だいたい、よく見てないけど鉄板で偽ブランド品だろうし、60万とか首くくるとか言ってるけどオレに助ける義理はねーよ。ていうか、そんな言葉に騙されるかよ。しかし、今日に限ってカーコンポを買うための現金が12万円もある。ヤバイ、ヤバすぎる。どうやってこの状況を回避しようか。オレはこの12万を死守して無傷で立川に辿り着けるのだろうか。そんなことを考え、血走った目で凝視しオレにプレッシャーをかける荒勢を真横にして対処法を模索していた。




つづく