第23回





●4時44分  -part2-





 き、来た‥‥。うーん‥どうするべきか‥‥。
 とりあえず、音楽のボリュームを下げて用件だけでも聞くか‥‥。
 前回はウィンドーに腕が入るくらい開けたのがそもそもの失敗だったので、今回はウィンドーを1センチだけ開けてドキドキしながらチンピラ風を見上げて問いかけた。

「い‥いやーどうも。なんですか今日は?」

「ちょっと道を聞きたいんや、その辺に車停めてや」

 またそのパターンかよッ! なんだよッ! オレのこと覚えてねーのかよッ! 偶然またオレの後ろに来たって事? ビックリさせるんじゃねーよ。買わないって言ってるじゃんよ! しつこいだよホントに。しかも今回は乱暴な口調だしさ。2度も同じ手口に引っ掛かるかよ。

 あ‥‥もしかしてアレかなぁ。後ろに取り付けた大きなスピーカーかなぁ。前回の時は無かったしな。これか。これがあるから違う車だと思ってるのか‥‥?。確かに後方から見たらスピーカーが有ると無いとではちょっと印象が違うだろうし。
 いや‥‥、でもさ、あの時の12万でこれを買ったなんて分かりっこないよね。だいたいに寮の大家さんの車ってことになってるし。
 いやまてよ、オレは新聞配達員なのに、この時間にまた大家さんの車でこんなところにいるのも不自然じゃないの。
 そんな高飛車な配達員いないよね‥‥。
「営業所どこだ?」なーんて聞かれたらマズイな‥‥。前回と逆方向に走ってるし‥‥。
 ヤバイな‥‥。あーヤバイヤバイ。思い出されてウソがバレるのはヤバイよ。そのまま気付かないでいてくれ。
 相手も馬鹿じゃないんだから2度も騙せないでしょ。今度こそリアルで殺されるかもしれないな‥‥。

 ん?‥‥何くだらないこと考えてるんだオレ。バカだな。簡単じゃん。断ればいいんだ。道を教えなきゃいいんじゃん。停まらなきゃいいんだよ。ということで、

「今ちょっと忙しいんで。他の人に聞いてもらえますか」

 と明るく答えた。すると、チンピラ風はウィンドーに顔を近付けて上から睨みつけると高圧的な口調で、

「道、教えるだけなのに、忙しいも何もあるかいッ! じゃ頼むわ!」

 オレの同意も得ず一方的にそういうと自分の車に戻っていった。
 おいおいマジかよ‥‥……。

 バックミラーを再び見ると、助手席の荒勢は、膝に例の白い紙袋を置いてスタンバイしていた。

 死んだんじゃねーのかよ荒勢ええッ!! またこっちに来るのかよッ!

 ま‥いいか。その辺の道を曲がって逃げちゃえば、こっちの車はターボが付いてるし逃げ切れるだろう。楽勝だよそんなの。そう思って信号が青に変ったので余裕で走りだした。

 それにしてもさ、こんな偶然ってあるんだなー。都内にどのくらい交通量があるのか知らないけど、一度、自分の後ろに並んだ車が、再度、後ろに並ぶなんて。どんな確率なんだよ。
 こりゃ、もしかして宝クジで高額当選に当たるくらいの確率なんじゃないの。冷静に考えたらスゲーじゃん。なんとなく。
 つーかさ、こんな短期間に連続して3回もヤクザな人達にからまれるなんて、どうかと思うよ。ほんとに。それが一番スゲーよ。人知を超える力を感じるよ。
 しかし、なんでもいいけど今はこの状況を回避しなければいけない。とにかく後ろに引っ付いている奴らをブッチぎり、無事に家に帰ること。これが今日一番の課題だ。 





つづく