第41回





●ハダカ男  (Part2)





 オレは煙草を吸いながら誰かを待っているような素振りで静観。時計を見たりしてハダカ男と目を合さないようにしていた。観客はオレひとりだし無視していればそのうちどこかに行くだろう。そう思っていると、

「ここお前の家か? ここはお前の家なのか? あッ?あッ?あッ?」

 うわッキタ−。いつの間にかハダカ男がオレの隣に立っていた。デンジャラスな汗を流しながら荒い鼻息。オレの方を向いているのに眼は明後日の方向を向いている。ヤバイ。こんな男にまともに返事しても無意味だ。オレはドキドキしながら適当に答えた。
「うん。そうだよ」
 ハダカ男はオレが背にしている雑居ビルを見上げながら「ふーん」といって大人しくなった。
 ホッと安心していると、今度はオレのすぐ隣にある公衆電話の前に立った。受話器を耳にあてどこかに電話しようとしている。が、どうみても適当なダイヤルを押しているようにしか見えなかった。

「うん…うん…俺。うん…ああ…コロス。ああ…うん、コロスって。ああ殺す…。殺す、殺す、絶対殺す!。殺す殺す殺す殺すぞらオラアアアアアッ!」

 誰かと話していたハダカ男は、突然、狂ったように受話器で電話機を連打。そのままエビのように飛び跳ねたかと思ったら、勢いよく近くにあった消火用ホース格納庫に蹴りを入れた。
 受話器はボロボロ。消火用格納庫は爆発したような音とともに大きくヘコんだ。凄い力だ。
 理性の吹っ飛んだ攻撃は力の加減がない。あんな蹴りをマトモに受けたら‥‥。そう思うと寒気がした。強いのはわかったから早くオレの近くから消えてくれ。

 勢いに乗ったハダカ男は、そのまま「駐車禁止」と書かれたスタンド看板を持ち上げ、それを振り回していた。いよいよココにいるのも危ないかもしれない。
 と、その時、ハダカ男が後ろを向いている瞬間、エレベーターホールに隠れていた彼女が走って出てきた。そして「だるまさんが転んだ」でもやるかのように、オレの目の前に停まっているライトバンの陰に隠れ小声でいった。

「エヘヘヘ。なんか面白そう。わたしも近くで見た〜い〜」

 なんて緊張感がないんだ。しかも、そんな最前線で……。オレが呆れていると、ハダカ男がライトバンの方に歩いてきた。動物的勘でひとの気配を感じたのか、ライトバンの下を覗いたりして車のまわりを探しはじめた。
 マズイ。見つかるのは時間の問題だ。
 もうこうなったらタイミングを見計らって逃げるしかない。オレは彼女に合図し、1、2の3で飛び出した。二人して全速力で走り出すと、それに気づいたハダカ男は看板を振りかざし凄いスピードで追いかけてきた。

「オラあああッ! 殺すぞおおおおおおおおおおおおッ!」







つづく