●池袋西口
そういえば、95年は池袋でもカラまれた。
雨あがりの池袋西口。車を運転してると腰に振動が。ベルトに装着してるポケベルの呼び出しだ。このときはまだ携帯電話を持ってない。丸井の脇に電話ボックス発見。路肩に車をビタつけテレホンカードで電話をかける。用件はたわいもない内容。5分で電話を切った。
車に戻ろうとすると、繁華街から横断歩道を無視して渡ろうとしてるオッサンと目が合う。夜のネオンがよく似合う邪悪な人相。ド派手なセーター。堅気じゃない職業の方だろう。キャバクラ帰りなのか、酔ってるような素振りだった。
「おい、こんなところに車停めてんじゃねーぞ!」
高圧的な口調で言葉を投げかけてくるオッサン。なんとなく不機嫌そう。ここは波風たてずに謝っておこう。酔っ払いに関わるのはもう懲り懲り。前回のハダカ男のことが頭をよぎる。
「スイマセーン、すぐ行きまーす」
と好青年っぽく明るく返事。これで文句はないだろう。オッサンは満足そうに頷きながら通り過ぎる。無事クリアーかと思ったら、
「こんなところに車停めんなよー!」
しつこい。一度いえばわかるってのに。面倒だがもう一度、元気に謝る。きっとキャバクラでドス黒い欲望が満たされなかったのだろう。でもオレにあたるのは筋違い。後姿を見送りながらポケットからキーを取り出した。その時、
「こんなところに、車停めんじゃねーよおおおおッ!!」
いきなり振り向いたオッサンは、怒鳴りながら猛ダッシュでオレにむかって突進してきた。
えっ? なに? なにが起こったのッ?!。
迫り来るオッサン。意味が理解できない。慌ててロックを解除、ドアを開けるオレ。よくわかんないけど車の中に逃げこめば鋼鉄のボディーがオレを護ってくれる。運転席に乗り込むと同時にドアのロックボタンを押してカギをかける。
と、ガチャガチャガチャガチャ。オッサンの右手がドアをこじ開けようとしてきた。タッチの差で間に合った!。
「おいっ! 開けろよっ! 開けろおおおお! ここで停めてんじゃねえよッ!」
窓ガラスをバンバン叩きながら吠えるオッサン。顔を近づけての恫喝。蹴りも一発飛んできた。でも、こんなことは慣れっこさ。アクセルを踏み込んで急発進。逃げるが勝ちだ。オッサンは強引に車を捕まえようとしがみつこうとしていた。その直後のこと、
「ボムン」
右の後輪が何かを踏んだ手ごたえあり。
「あ、足踏んじゃった!?」
でもまあいいか。空き缶かもしれないし。オレは振り返らずに要町方面に車を走らせた。車を蹴られたのはムカついたが許容範囲の衝撃。あの程度ならヘコミもしないだろう。まさに、踏んだり蹴ったり。怖い街です池袋。