第54回





● ハイビーム




つい最近のこと。カーショップに行くためオレは車を走らせていた。雨避けが少し剥がれていたので両面テープを買うためだ。夜の9時までやってるはず。家からわりと近いし余裕で買い物ができるだろう。オレは焦ることなく、ほのぼの運転を心がけた。
信号で停まっていると、左側からミニバンが顔を覗かせているのが視界にはいった。じわりじわりと車線に入る意思表示をしている。
急いでないし入れてやってもいいのだが、なんとなく強引に入ろうとしてるその姿が若干気にいらなかった。オレの後ろは余裕で空いている。焦らずにそこに入るがよい。そう思ってミニバンを自分の前には入れなかった。
こういう時、前に車を入れる入れないは状況判断と気分で決める。オレは前の車との車間をピッタリつけ断固としてミニバンを入れるのを阻止した。
ミニバンも絶対にオレの前に入りたかったらしく、かなり頭を出していたが、無理とわかると諦めてオレの後ろに車をつけた。
バックミラーがやたらと眩しく感じた。
最近の車はどれもライトが輝かしい。そう思いながら車をゆるゆる走らせていた。が、どうも左のサイドミラーがギラギラ眩し過ぎることに気がついた。
なんだ? 
後ろの車がハイビームにしてるのか。まぁ、特に問題はない。されど、左のサイドミラーだけが眩しいことが少し疑問に感じた。

・ ・・・・これは、もしや意図的にしているのか?。
オレは身体を捻って後ろを振り返ってみた。すると、後ろのミニバンが車体半分を左にズラして、ワザとオレのサイドミラーにハイビームを当てていることに気がついた。
思いがけないトゥルース。
前に入れなかったのがよほど頭にきたらしい。オレを挑発してるつもりなのか。それとも復讐?・・・。なんだかワクワクしてきた。
もちろん、そんな嫌がらせでは微塵も頭にこない。それよりも、これからの展開に期待。道はまだ渋滞している。もしかしたら怒った運転手が降りて来るかも。
これは、きっとカラまれるパターンに違いない。
今回はどんな因縁をつけられるんだろう。
念のため携帯のカメラを起動させる。シャッターシャンスがあるかもしれない。オレは右のミラーで後ろを見ながら期待に胸を膨らませた。
が、ミニバンに動きはない。ハイビームだけで満足しているのか。つまらないヤツだ。これじゃあネタにならんじゃないか!。だんだん相手が降りてこないことに腹が立ってきた。
こうなったらオレから降りていくのもアリかも。もの凄い剣幕で捲くし立ててみるか。いや、それも大人気ないか・・・。
そうこうしてるうちに目的地のカーショップが見えてきた。オレはウィンカーを点滅させ駐車場へとハンドルを切った。そのとき、チラりとミニバンの運転手が見えた。
ハンドルを握っていたのはパンチパーマのおばさんだった。