第1回
自称・天下の奇祭『伊豆稲取温泉どんつく祭』


 男根信仰。世界各地にある、男性器を御神体として奉る文化のことだ。静岡県の稲取にも、巨木を削りだして作ったチンコが奉納された「どんつく神社」がある。どんつく神社では、毎年6月7〜8日に、チンコ神輿が町を練り歩く「どんつく祭」を開催。チンコ神輿だけではなく、顔半分を手ぬぐいで隠した男女が舞踊る「しょうふく面踊り」や、数十隻の漁船が参加する「漁り火パレード」、巨大ナイアガラが目玉の海上花火大会なども催されるとのこと。しかも今年は40周年記念スペシャルとして、鳥羽一郎(「なぜ?」と思ったら、どうも御当地ソングを歌っているらしい。三重出身なのに。熊本出身なのに『渡良瀬川』を歌っている森高千里のようなものなのだろうか)の歌謡ショウも行われるらしい。さっそく会場へ行ってみた。
 6月7日16時、どんつく神社到着。切り立った崖の上にあり、土ワイもしくは火サスの予告のような風景が眼下に広がる。ここでは祭りの最初のイベント、チンコ神輿への魂入れが行われる。ここのチンコ神輿は、スタンダードな横倒しタイプ。神奈川県川崎市のチンコ祭り「かなまら祭」にもチンコ神輿が登場するが、そちらはチンコがそそり立ったレアな勃起タイプだ。
 メイン会場であるはずのどんつく神社は、あまり人がおらず閑散とした雰囲気。なぜ? 理由はすぐに判明。縁日や歌謡ショウなどが行われる会場は、神社から歩いて10分以上かかるお祭りストリートで行われるらしい。神輿も魂を入れるや否や、アズスーンアズ軽トラに乗せられてお祭りストリートへ運ばれていった。軽トラで運ばれる神輿。なぜ? しかしこんなつまらないことで疑問を感じている場合ではないのだった。
 お祭りストリートのほうへ行ってみると、平日のせいかまだ人陰はまばら。というか、全然いない。祭りのタイムスケジュールを見ると、20:00〜芸妓踊り、20:20〜海童太鼓(わだつみだいこ)、20:40〜40周年記念特別ステージ、22:00〜海上漁り火パレード&花火大会となっている。お神輿がかつがれるのもこのタイミングのようだ。祭りが始るまで付近をぶらつく。30分ほどでひとまわりできるくらいの小さな港町で、コンビニは駅前以外なし。スマートボールや射的の店が数件並び、テイスト的には熱海に近い。が、規模は1/5くらい。歌謡ショウが行われる広場には天狗とカラス天狗が背中合わせになったナゾのオブジェ(目が光る)が置かれ、そのすぐ横の海には海岸沿いにものすごく長いナイアガラ花火用のワイヤーが釣り上げられている。小さなねぷたもふたつあったが「これっぽっちだったらないほうがいいのでは?」というレベル。小一時間で見るところがなくなってしまったため、目抜き通り(『元気が出るテレビ』でたけし猫招きを設置した熊ノ前商店街の1/10くらいの規模)にあったペンションでおみやげのチンコまんじゅうとチンコ飴を買う。売店のオバサンに花火はどのへんがよく見えますかとたずねたら「……夜はすごく混みます。…………早くきて場所をとったほうがよろしいかと……」と、横溝映画に出てくるナゾの老婆のようなとぎれとぎれのしゃべりかたで答えにならない答えを返してきた。ちょっと恐くなったので、いったんホテルに戻って休憩を取ることにする。
 20:00、そろそろ盛り上がってるかなと、お祭りストリートへ。おおっ! いるいる! せまい道路が人で溢れかえってる。といっても、平日の渋谷のスクランブル交差点くらいだけど。芸妓踊りや海童太鼓と同時に、神輿が街へと動きだす! ん? かついでるのは観光客のおばちゃんだけ。と、思ったら、続けて地元のおっさんの団体、地元の女性の団体(高年齢チームと低年齢チーム)と、次々神輿が登場! 神輿4基もあるじゃん! 魂入れたのは1基だけなのに。なんで? どぼぢて? 男神輿にまじって、鳥羽一郎も練り歩いている。が、小さくてよく見えず(推定158センチ)。4基の神輿はお祭りストリートの端まで20メートルほど移動し、そのままスイッチバックで戻ってきた。そしてまた同じルートを往復。以下、えんえん繰り替えし。これ、神輿の動き方としてありなの? でも、せまい範囲で動いてくれているおかげで、ステージと神輿がつねに同時に見える。いつの間にか鳥羽一郎がステージにあがって歌を歌い始めた。近くまで見に行こうと移動を始めたら、つく前に鳥羽一郎リサイタルは終了。2〜3曲しか歌わないんじゃないのではと予想していたが、まさか1曲で終わるとは……。演歌の世界の厳しさを垣間見ることができた。
 ペンションのオバサンの教えにしたがい、早めに海岸道路へ移動して花火観覧の準備。「……すごく混みます」といわれたが、30分前でも余裕で最前列。TDLのエレクトリカルパレードになれている人なら、この空きっぷりは感激するはず。地べたに座って海を眺めていると、裸電球とおぼしき明かりをつけた漁船が海に出てきた。最初は一隻だったが、気がつくと40隻ほどの船が列をなしている。夜釣りかな〜と思っていたら、どうやらこれが漁り火パレードらしい。「パレード」という語感とはかけ離れた、静かで地味な隊列だが、なかなか見られるものではないのでしみじみと鑑賞する。突然「ひゅるるるる〜」という音とともに眩しい光が! 打ち上げ花火が始った。海の花火は、海面に花火が写るし、風が強くて煙がすぐに消えるからすごくキレイ。大きいものや小さいものが次々と上がり、ラストは巨大ナイアガラ。真っ暗だった海の色までわかるくらい明るく、鼻先に火花が飛んでくるのではというくらい間近。大迫力! 
 どんつく祭のパンフレットを見ると「二千年前からこの地に伝わる、夫婦和合、子孫繁栄、無病息災を神に祈願する祭り」と書いてある。二千年前といえば、まだ日本は弥生時代。そんな昔からほんとにそんな祭をやってたの……? 一説によるとこの祭、昭和中期に村起こしの一環として始めたはいいが「下品だ」「金もうけのために祭をやるなんて」と地元民からはいやがられているとか。まあ、そんなことは観光客には関係なし。おもしろければOKでしょ。和製マスカレードことしょうふく面踊りも見たかったが、今回はタイミングがあわずパス! 来年はぜひ見に行きたい。


どんつく祭公式サイト


稲取温泉こらっしぇ
http://www.inatorionsen.or.jp/dontsuku/

鳥羽一郎公式サイト
http://www.tobaichiro.net/official/


【東京からのアクセス】
電車:東京駅からJR特急「踊り子」号で伊豆稲取まで2時間30分。乗車券3180円、特急券2250円。1日4本。自動車:東名高速道路東京ICから大井松田ICまで1850円(普通車)。小田原を抜け、海沿いを南下。所要時間3時間。走行距離158キロ。






魂を入れられたチンコ神輿。女性は触ってはいけないはずなのだが、観光客のおばちゃんたちはキャーキャーいってさすっていた。


軽トラで運ばれる神輿。「夜になったらお祭りストリートに見にきてね〜」とアピールしていたおじさんの浴衣の模様は天狗だった。


海岸近くのお祭りストリートで担がれるのを待っているチンコ神輿。先端にはちゃんと尿道の穴が開いている。芸の細かさに脱帽。


うすらさびれた射的屋。近くにはストリップなどもあった。夜はおすなおすなの満員になっていたが、祭りの時だけなんだろうな〜。


天狗のオブジェ。下にタイヤがついていたが、この日はピクリともしなかった。この会場まで運ぶためだけのタイヤなのかもしれない。


海風にあおられてバタバタとはためく祭りののぼりたち。海の上にはナイアガラ用の超ロングなワイヤーが張られているのが見える。


隣に立っている人とくらべると、それなりに大きなものであるということがわかるねぷた。しかし、2個だけって寂しすぎないか?


先端直径5センチ、全長13センチのチンコ飴。かなりのカリ高。パッケージには「不思議な力がわいてくる」と書いてある。


伊豆稲取銘菓どんつく囃子。9個入り525円。かなりリアルなチンコ型のおまんじゅう。素敵なティータイムのお茶菓子に……。