俺の店はカウンター12席のみ。テーブル席とかは置いてない。そやから、団体客はあんまりこない。一人で来る人や、2、3人で来る人が多いな。まぁ、大概のみなさんには、俺の店は静かな感じで、落ち着いて楽しむ店と思って利用してもらってるみたいだ。俺の作ったお洒落カクテルを片手に小粋なトークを楽しむといった感じかな?うふふふ・・・
で、俺と会話しに来るお客さんも多い訳で、俺も手が空いてるかぎりは、お客さんと会話したりする。俺は基本的に生活に必要とされないどーでもいいような話しかできないので、話のレベル的には中学2年生ぐらいだろう。まぁ、真剣に相談とかされれば、中2なりに一生懸命考えるけどな。で、一緒に来たお客さん同士で熱く語ってる時は俺は口を挟まない事にしている。仕事の話、悩み事相談、深刻な話、いろいろあるわな。そんなときの俺はグラスをふいたり他の仕事をしてお客さんをほっとく。俺個人の考えなんだが、BARというとこは居心地のいい空間を提供するのが仕事やと思うのだ。お客さんがカクテルなりウィスキーなり、つまみなりをオーダーされて、そのモノを提供した後、最低1時間ぐらいはくつろいでいかれる。その時間をいかに居心地よく過ごしてもらえるように努力するのが俺の仕事やと思うのだ。だから、ほっとくと言ったもののお客さんに対しては注意を払う。
でもねー、やっぱきっついときあんのよ。カップルでこられたお客さんのときにねぇ・・・。
男の人のほうが女の人をメッチャ口説いてるときとかぁ・・・。不倫カップルの女の人のほうがいきなり別れ話をきりだしたりとか・・・。そういうときって、大概他のお客さんがいないときで、オーダーももちろん入ってないわけで、俺はそんな話に参加できるわけないわけで、で、そのうち拭くグラスも無くなってきて、めっちゃ手持ちぶさたになるわけなのだ。とはいったものの、完全にほっといて厨房で、「投稿ニャンニャン写真Z」とか読んでいるわけにもいかないので、ちょっと距離をおいてカウンターの端にいたりする。話を聞いてないようで聞こえてくるので「あ、そんなこと言ったらだめじゃない。」とか「えーそんな、妥協案でいいの!」とか「もうちょっとねばろうよ、ねぇ」思っても口に出さない。顔にもださない。ハイライトをくわえて、眉をひそめて、鈴木聖美の曲の「TAXI」に出てくるマスターのイメージを演じたりするのだ。おっ、けっこうカッコいいぞ俺ったら。なんか、大人の店をやってるな、俺ったら。
でもねぇ、そーゆう話って長引くんだよねぇ。ついでに昔流行った「マーフィーの法則」じゃないんだけど、そーゆーときにかぎって、他のお客さんこないんだよねー。いいかげん眉をひそめるのも疲れてくるんだよねー。しょーがないから、メモ帳で鶴を折ったり、頭の中で一人しりとりをしたり、ロト6当たったときのお金の使いみちを考えたりするんだけどねー。で、話がヒートアップするにつれ俺の居場所がだんだんなくなってきて、しまいに「一人息止め選手権ジャック・マイヨールに挑戦」とかしちゃったりするわけよ。まぁ、しんどいけど、そんな話をできる場所を提供するのも俺の仕事なんだよなぁ・・・。あ、そんなお客さんを嫌ってるわけじゃないよ。俺は息止め記録をのばして素潜りチャンピオンを目指してるだけだからね。