第21回
「泥酔」

 オレの仕事の性格上、毎日のように酒に酔ったお客さんを相手にしている。
その中には、かなり泥酔して、カウンターにつっぷして、眠り込む人や、酔って普段ではありえない行動をする人もいる。
酒を飲んで酔っぱらうという事は、当然の事なので、しょうがないし、オレもこの仕事を10年以上やってきたので、多少の事は対処できる。
・・・・が、やっぱし、酷いヤツは酷いね。
「ええかげんにしろ!」みたいなのもたまにある。
が、そーいうヤツにかぎって、翌日とかに、「いや〜昨日の事ぜんぜん憶えてなくてさぁ〜。」とか、あっさり言いたれやがる。
 オレはそーいうヤツは、「けっ!恥ずかしいもんで忘れたふりしてんのやろがっ!」と思っていた。
・・・・最近までは。
 オレは、自分で言うのもなんだが、けっこう酒が強く、飲み屋で眠りこんだり、記憶が無くなるということがなかったのだ。
・・・・最近までは。
 そう・・・・やっちゃったのね・・・・最近。
 休日の夕方から、ある新年会に出席し、一次会、二次会、三次会と飲み歩き、解散になったあとも、他の知り合いと合流して、楽しく飲んでいたのだ・・・・午前3時までは。
で、気がついたのは、午前11時。自分の店のカウンターに突っ伏して寝ていて起きたのだ。
その、午前3時からの記憶がまったくないのだ。
飲んでいた店から、オレの店までは歩いてすぐなので、自分で歩いてきたんだろう・・・もちろん、その歩いて来た記憶もないけど・・・・。
いや〜ぞっとしたね。飲んでる間の記憶が無いんだもん。いったいオレはその空白の時間になにやってたの?
もちろん、その日のうちに、その一緒に飲んでた知人に問い合わせてみた。
・・・・・んんんん・・・この仕事を始めて十数年・・・ようやくお酒の恐ろしさがわかったような気がした・・・。
 なんでも、服を脱ぎだし裸になって、そこの店の店員に、スパーリングの相手を強要し、裸のまんまカウンターに上り、ゴロゴロして眠りだしたりしたんだそうだ・・・。
あげくのはてに・・・乳首を見せ、「オレの乳首を吸ったら1000万円貸してやる!」とか言い出したそうだ・・・・。
んんんん・・・まったく意味がわからん!なぜ乳首を吸わせたいのか?なぜ1000万貸すのか?つーか、なんで裸なの!
いや〜怖い!怖すぎ!酔っぱらって、奇行をするのもそうだけど、それを全然憶えてないのがこんなに怖いことだなんて・・・・。
 酒っていうのは、いうたら合法的な麻薬みたいなもんだもんなぁ・・・・。
 オレは、大変なもんで商売してるんやなぁと、つくづく思った。
 でも・・・・泥酔してるときは・・・割と自分に正直になってんのかも・・・
 普段、抑圧されている、本当の自分が出てくるのかも・・・
 そんなにしてまで、乳首吸われたかったのかなぁ・・・・オレ。