テキトーとは

 板谷さんがしみじみ言った。
「去年から悪いことが続くんだよなぁ。厄払いとかした方がいいのかなぁ」
 確かに自身の入院も含めて、板谷さんの周りでは悪いコトが多く起こっている。
 効果があるかどうかは別にして、本人の気がすむなら受けておいた方がいい。
「そうっすね。板谷さんがそう思ってんなら受けた方がいいですよ。行きますか、佐野厄除け大師」
 板谷さんはしばらく考えた後、こう言った。
「そうだよなぁ。でさ、俺そういうのあんまり詳しくないんだけど厄年っていくつなの?」
「42歳っすね」
「えっ? じゃあ、まさに今、そうじゃん。やっぱ行った方がいいね」
「あっ、でも、厄年って数え年で計算するんですよ。板谷さんは数えだと今44歳だから後厄も終わってますね」
「あっ、そうなんだ。じゃあ、行かなくていいや。佐野遠いし」
 早くも前言撤回? どうした、さっきのしみじみ顔は? 
 こっちも勧めた手前引っ込みがつかないので「いやいやいやいや、厄年でなくても厄払い行っていいんですから」「別に佐野じゃなくても近場で大丈夫ですよ」「『ツイてないと思ったら今日が板谷の厄払い記念日』じゃないですか」と嵐のようにフォローしたけど、まったく効き目はなし。
 そして板谷さんは、ちょっとだけ申し訳なさそうな顔して、こう言?。
「なんかさ『厄払い』って、ちょっと言ってみたかったんだよね」