キャッチボール


 ふと、田村くん(ハック)の日記を読んでみたら野球について書いてあった。フィクションだかノンフィクションだかよくわかんない内容だったが、田村くんが野球に自信を持ってることだけは伝わってきた。そしてオデはあるエピソードを思い出した。
 10年、いや15年近く前の話。当時、パチンコ必勝ガイド編集部では編集長の肝入りで草野球チームが作られることになった。若手の田村くんはもちろん否応なく参加させられる。当時の田村くんの基本スタイルはメガネにざんぎり頭、そして開襟シャツ。村役場の職員のような落ち着きはあっても、運動のできそうなオーラを全く発していな
かった。グランドに現れた時はジャージ姿だったが、明らかにジャージに着られていた。
「田村くんて野球できるの?」
『できません』という答えを想定して質問をすると、田村くんはお得意のちょっと人をバカにした口調でこういった。
「巨砲さんが思ってるより全然、うまいと思いますよ」
「えっ、そうなんだ」
 ご存じのとおり野球は吐いて捨てるほど競技人口のいるスポーツである。当然、比較の対象も機会も多い。『うまい』と口にする以上はそれなりというか、相当のプレーヤーなのだろう。そう言われてみると田村くんの特徴でもある、上下動の激しいちょっとジャンプするような歩き方も、押さえ切れないバネの強さに思えてきた。
「じゃあ、キャッチボールしようぜ」
 そう声をかけ塁間の4分の3くらいの距離をとる。軽くふりかぶってボールを田村君に向かって投げる。するとどうだろう。ボールに向かってグローブを差し出す田村君。その姿が8−2、いや9−1でヘタくそな感じなのだ。
 バチーン!
 ボールはグローブをかわして田村君の顔面に直撃した。鼻を押さえながらも「全然、大丈夫っすよ」と強がる田村君は、心配してかけよったオデにこう言った。
「巨砲さん、曲げました?」と。
メンタルだけは間違いなくプロレベルだ。