日光(その2)―雪降る高速―

あれは、シンシンと底冷えのする、ある冬の夜の事だった。
ふらりトリオは、なんだかんだで海の方に行く事が多かった。板谷くんの内にある“族”とか、“サーファー”とか、そういう筋のものがそうさせていたのかもしれない。その日はめずらしく、走っているうちに山の方へ行こうという事になって、首都高から東北自動車道に車を走らせた。

★彡★彡

しばらく走ると、佐野に差し掛かったあたりからだったろうか?チラチラと雪が降ってきた。ボクは静岡の人間なので、雪はとても珍しかった。なにしろ静岡ではめったに雪は降らない。10年に1度降るか降らないかという程度である。雪が降るだけでも珍しいのに、それに加えてここは高速の車中。風はそんなに吹いていなかったと思うが、雪はまるで車に向かって飛んで来るように見えた。ボクは雪が暗闇の向こうから次から次へと車に飛び込んでくる光景をずっと眺めていた。

前の二人はというと、そういう場合ではなかった。雪は結構ジャンジャン降ってきた。そもそも車はノーマルのままだからタイヤも当然そういう事で、ちなみにチェーンといったものは有るはずもなかった。運転していたイケちゃんは妙に無口になって、ブロックサインの方もより慌しく動きだしていた。足もタップを大袈裟に踏み始めて、いよいよ運転が心もとなくなってきた。

「危ない!危ない!危ないよ!イケちゃん!」

フラつく度に板谷くんはそう言うとイケちゃんの肩をピシッと叩いた。

「わ、わかってるよ。」

元々、イケちゃんも良く喋る方で、波はあるものの一旦喋りだすと、ボクの知る限りではキャーム、板谷くんに次ぐぐらいに喋ったと思うのであるが、この時ばかりはそう返すのが精一杯のようであった。

☆彡☆彡

やっとの思いでパーキングに辿り着いて、運転は板谷くんと交代することとなった。雪はお構いなくドンドン降っていた。しばし休憩していると、パーキングエリアってものは約20kmおきにあるだとか、サービスエリアは約50kmおきだとか、パーキングエリアとサービスエリアの違いが意外とみんな分かってないから困るだとか、イケちゃんは堰を切ったように喋りだした。イケちゃんはこういった薀蓄小ネタ集をいっぱい携えていて感心するのであるが、別にそういう違いが分からない人が多いからといって、イケちゃんが困ることはないだろうと思った。


☆彡☆彡

宇都宮までやってきて

「こりゃー、どうやら日光ってことだな。」

と板谷くんが呟くと、車は東北道に別れを告げて脇へ逸れていった。
この時、どうして日光ってことなのかは聞いてはいけないのである。

つづく