|
ごぶさたしておりました。年があけたと思ったら早いもんでもう3月。4月になれば心機一転、新しいところで新しい事をスタートする人もいることと思います。2005年と言えばなんと言っても『キャームのお悩みヒットマン』出版でしたので、上京してキャームに初めて会った時の話をします。
上京してすぐの頃のある日、ボクは板谷家の離れで板谷くんのバカッ話を聞いていた。
「グハハハハッ!そりゃそうだよ。」
しかし良くしゃべる男だなあと思っていたら、ガチャッとドアが開いた。
「ただいまぁ」
「おぉ!キャーム!」
「きゃ〜む?」
「コーちゃんよぉ〜!ハンパッじゃねーよ!」
ハンパの『パッ』をとても力強く一気に言うのが特徴的だった。
スーツを着て、小脇に小さめのビジネスバックを抱えた男が入ってきた。肩パットのせいなのか良く分からないが、上半身がゴツくて四角い印象だった。
「グハハハハッ!どーした〜!キャーム!」
「きゃ〜む?」
「あぁ、この男『キャーム』だよ。なあキャーム。」
「おぅ!!」
そう答えると、男は抱えていたビジネスバックを畳の上に置いて、あぐらをかいた。
「ほらなぁ!」
「はぁ・・・?」
「キャーム、こいつは『キョージュ』だよ」
「ちわっ・・・」
すると薄い目がコッチを向いて、そして上にいって下にいったような気がした。
「なるほどな!」
まだ会ったばかりだっていうのに、全てお見通しのようなこのセリフだ。
「それはそうと、コーちゃんよぉ〜!ハンパッじゃねーよ!」
やっぱり『パッ』が強調されている。
「グハハハハッ!だからどーしたー!キャーム!」
それから、確か、キャームはその日に起こったそのハンパじゃないという話をしたと思う。キャームはその頃ガス屋さんに勤めていて、その仕事か何かの話だったと思うが中身は覚えていない。とにかく、それまで勢い良くしゃべり続けていた板谷くんに、微塵も挟むスキを与えず、ぐおぐおしゃべり出したのにボクはただ唖然としていた。板谷くんは相槌を打つのが精一杯だった。
話はいつの間にかボクの方に振られていて、おめぇさんはこれからどうするべきかという説教に似た話を聞かされていた。「受験なんてもんに受かりさえすれば、『人生勝った!』なんてと思ったら大間違いだ!」とか「大学ってもんに行っときゃあとりあえずなんとかなるなんてチャンチャラおかしい!」とか「世の中マニュアル通りになるほど甘かぁねぇ!」とか「人生晴れの日ばかりじゃカラカラに涸れちまう!」とか「止まない雨はないが、長く降る雨はある!」とか、どこか格言めいた話が延々と続いた。上京早々どうしてこんなに説教されなきゃならないんだと思わないではなかったが、いずれの話も妙な説得力があって感心させられていた。
「それじゃあよぉッ!幽霊とおばけの違いは何か分かるか?」
そうキャームは言うとおもむろに立ち上がって部屋を出て行った。
「小便だよ。」
板谷くんのひさしぶりのセリフだった。
「キャームは席を立つ時、相手に休ませない為にクイズを出しておくんだよ。」
「ふ〜ん。」
それにしても、この日はボクが知る限りの良くしゃべるランキング1位と2位がいきなり現れたので面食らっていた。そのランキングは20年以上経った現在でも更新されていない。
|