社長シリーズ
 今日もどこかで 「ジャパネットたかた」 の社長の声が聞こえる。 血圧が心配になるほどカン高いのでマシンガントークと言うよりはピストルと表現すべきか。 それも終始テンションが高いため 「喋っていることの中でどこが大事か」 がボケやすく、「パタリロ」 に出てくるバンコラン少佐の上司、イヨマンテ・サンダースのピストルのように 「抜くのはめっぽう速いが狙いは滅茶苦茶」 というヤツだ。 しかし一見ハチャメチャに見えるその弾痕を線で結んだら 「金利はジャパネットが負担」 と読める。 ジャパネット恐るべし。

 さて、このジャパネットたかたの場合はCMというより社長が直接商品の機能、価格を説明して売り込む 「営業活動の中継」 であり、「ジャパネットたかたの企業CM」 自体は確かイメージ映像的なものである。 しかし他社では 「社長(や会長などの代表者)が出演するCM」 はよく見かける。 社長自らが出演する事を 「出たがり」 と決めつけることはたやすいが、今なお社長出演CMが後を絶たないことを考えると、そこにはそれなりの 「効果・手応え」 があるのではないかと思わざるを得ない。

 社長が出演する狙いとしてまず考えられるのが 「お茶の間に親しみやすさを植え付ける」 ことであろう。 「顔の見える商売」 とでも言うのだろうか、この顔が売っています、信用して頂いて大丈夫です、というヤツだ。 しかし、狙いとは裏腹に、こういうCMを観た時に私たちがまず思うことは 「うさん臭い」 である。

 理由は簡単だ。 テレビの画面を通じてとは言え、私達は初対面の人間に対してそうそう簡単に気を許せるものではない。 ある芸人をテレビで初めて観る時、ネタがどうこう、より先に思うことは 「こいつ誰だよ」 である。 かつての 「ピップ・エレキバン」 の会長のように 「立ってるだけで味がある」 というキャラクターでもなければ、まず 「こいつ誰目線」 で見られる可能性は高い。 そういう社長CMが画面の向こうの一般消費者に受け入れられるには、辛抱強くオンエアを続ける事と共にそれなりの工夫が必要だ。

 そこでかつてウイークリーマンションで一世を風靡した 「ツカサ」 の社長は 「♪よんよんまるまるワンワンワン」 のキャッチーなメロディと共に犬を同伴した。 現在のCMで歌われている、前作に比べ出来の悪いメロディの歌詞は電話番号ではなくHPアドレス 「♪アドレスはニャンニャンニャン」 なので猫を抱いている。 なぜ犬から猫になったかはともかくとして、ベンチャー企業の社長にありがちなアクの強さのない、「少年のような風貌プラス動物」 で視聴者の懐に入り込んでいる。 「♪アドレスは・・・」 を歌う女の子達の 「B級感」 も敷居の低さを想像させる。

 「アパホテル」 の社長はその地味な顔に派手な帽子と衣装をまとう事によって私たちのド肝を抜いた。 ともすれば 「バカ」 と思われかねない奇抜な出で立ちではあっても、消費者に全国の主要都市で微笑む社長の巨大看板を見せつけ 「ここまでやれるのは商売に自信があるからだ」 と思わせればしめたものだ。 現に私はそう思ってこのホテルを選んだことがある。 あるいは社長のあの格好は消費者に不安から視線を外させる役割、相撲でいう 「猫だまし」 の手を叩く動作に相当するとも言える(「だましている」という事ではない。 念のため)。

 パターンとして他に考えられるのが 「社長の人柄アピール」 である。 「お客様を少しでも喜ばせようと真摯に取り組む社長の姿」 = 「企業理念」 を訴えるのだ。 現在社長が出演するCMとして一番露出が多いであろう 「リーブ21」 で、あの社長のもっさりした話し方が 「朴訥・素朴」 と受け取られて吉と出るか、はたまた 「どんくさい」 と思われて凶と出るかは難しいところだが、気になるのは社長自身よりも和田アキ子である。

 社長と共演するイメージキャラクターの人選については、ほぼ 「社長の独断」 なのではないかと思う。 かつてやはり社長出演CMを代表するものであった「ヴァーナル」 のCMには梶芽衣子が起用されていた。 その唐突な人事に誰もが 「社長が梶芽衣子のファンなのだろう」 と思ったのは自然な事である。 しかしそこは化粧品のCMであるから 「女優」 が起用されているという点では納得のいくものだった。

 じゃあこの 「リーブ21」 における和田アキ子はどういうことなのか。 社長がファンだったとしても発毛と和田をどう結びつけるのかがわからない。 しかし調べてみるとひと筋の光が見えてきた。 実は和田はイメージキャラクターとして初代ではない。 過去にはそういえば案外記憶に新しい松崎しげるがいたし、名高達男もイメージキャラクターを務めていたそうだ。 色黒でギラギラしたこの2人に私たちが抱くイメージは 「絶倫(ビンビン)」 である。 CM内で言われる 「身体の中から」 「細胞から」 というキーワードを考え合わせて極言すれば 「発毛力とはすなわち男根力」ではないのか。 そう考えると 「男の中の男」 和田アキ子の起用は満を持してのものであると言える。 適当なこと書いちゃった。

 さて、社長CMで今後注目していきたいものが2つある。 ひとつは「クリスタル・ジェミー」 という会社のもの。 「人生は一度きりだから輝くために自分で化粧品を作る」 「私が証明なの」 とキッパリ言い切っているとおり、実際てらてら輝いているこの女性社長は 「美白の女神(ミューズ)」 とも言われているという。

 もうひとつもやはり女性社長によるものだ。 「ハッピースピリチュアルメイクアップアドバイザー・ますおか はなゑ」 という人が出ているCM。 いや実はこの女性が社長なのかどうかはわからない。 たったひとつ与えられた情報 「ハッピースピリチュアルメイクアップアドバイザー」 という肩書きに幻惑されるのみ。 ここまで長くなった経緯は「三菱東京UFJ銀行」 みたいなものだろうか。

 テレビ的にはまだそのヴェールを脱ぎきってはいない二人にとって現段階のCMはプロローグに過ぎないのかも知れない。 今後この二人がそれぞれ展開する物語がどんなものかはわからないが、それは実写なのに五月女ケイ子の絵に見えるような気もする。