♪やめろっとー 言われても♪
<前回までのあらすじ>
 左モモと右尻エリカに出現したおできを摘出すべく、マシリトの残した謎のメッセージを携えてプーヤンのもとを訪れた私。 布一枚のあられもない姿でオペ室へ連行されたが、術中、最後の砦であるその布を奪われ臀部をでんぶさらけ出したのだが・・・

 やっかいもののおできをまずひとつ摘出し、物心ついてから初めて身体にメスを入れるという経験を済ませたことによって、私は何となくひとつ大人になったような気分に包まれていた。 摘出される際のひっかかるような感覚は気持ちのいいものではないが、痛いわけではないのでもう怖くない。

 頭の中で石野真子のデビュー曲を口ずさみながら(うそ)次の摘出を待った。 「じゃ、次は足のほう行きましょうか」 とプーヤンの指示。 自力で仰向けになったのか、ナースの手を借りてマグロを気取ったか、細かいことは覚えていない。

 仰向け・・・?あっ!ちょっと待ってください!さっきお尻のおできを摘出される際、私の秘部を隠してくれていたT字帯は、プーヤンの 「ジャマだから取っちゃいましょう」 という気楽な提案で外されているのだ! そのまま仰向けにされるということはすなわち女性の面前で私の本当に可愛い倅をお披露目することになる。

 しかし何の抵抗もできなかった。 そこで慌てふためくのはそれこそイチモツをぶら下げている男としてみみっちいと思ったからだ。 しかし正直に言うとその時の鼓動の激しさ、速さといったらその後の人生も含めて比較するものがない。 沸騰した顔で見上げた心拍数等の表示されているモニターはとんでもない数値を叩き出していた。 「トムとジェリー」 でよく心臓がハート形に飛び出すシーンがある。 まさにあんな状態だった。

 仰向けというのは表情まで見られてしまうのが困る。 両手で顔を覆いたかった。 実は仰向けになってすぐに、ナースが何も見てませんという顔で私のうなだれた倅付近にタオルを掛けてくれたのだが、それまでの時間の長かったこと。 その後手術終了までの経過は、やけにたくさん縫うものだな、と思った以外は覚えていない。

 そのまま数日入院した。 股間近くを縫ったため排便には苦労した。 それ以外は元気一杯なのに、80年代、NHK「レッツゴーヤング」のサンデーズにいた橋本清美(誰も知りませんね)に似ている担当ナースがとっても優しくしてくれるので好きになりかけた。 いや、なっていたかも知れない。

 大部屋に入院していると、その部屋で一番古いのだろう、「牢名主」 みたいに威張っているおじさんがいた。 入院しているクセに髪の毛が少しでも乱れるのが嫌なようで、スプレーでガッチリ固めないと気が済まないらしい。 朝早くからシューシューやっているので私はそいつを 「スーパーハード」 と名付けた。 それがどうも癇癪持ちらしく、突然大声で怒り出したりするのがうるさかった。 窓の外にある樹木を眺めながら、「あの枝の最後の一葉が落ちたらスーパーハードは死ぬ」 と思って気を紛らわせていた。

 同級生のナースも時々様子を見に来てくれた。 「なあ、オレのオペを担当してたナース達、なんか(オレの股間の事)言ってる?」 と聞きたいぐらいだったが、もし同級生に 「ふふふ」 なんて言われでもしたら眠れなくなるのでやめた(大体自分の股間の評判を聞いたとして、その後どう生きていく)。 ただただ手術を思い出してはカーッと顔を熱くする日々は過ぎ、やがて退院した。 仕事に戻って取引先へ行くと、そろって 「どうだい、痔の方は?」 と聞かれた。 痔だけど今回は違います。

 こういうおできができやすいのは体質らしい。 実はその手術から3年後、右尻の手術痕の10センチ上にまた何かできた。 今までのと違ってすごく痛い。 できた当初は場所が場所なだけに眠れない日もあった。 やがて激痛はおさまったのだが、また時々腫れて痛くなる。 その繰り返しだった。 これも取ってしまいたいので再びDr.マシリトに診せたら、腫れを指で押し、思いっきりぎゅううううっと膿を絞られる。 私もうううううっと声が出て、あまりの痛さに涙をこぼしてしまった。

 「むしろもっと腫れた時に来た方がいいんだけど」 というそのおできの正体は 「毛包炎」 というらしい。 Googleで 「おしり おでき」 と検索すると、同じ悩みを持つオデキスト達がいっぱい!みんな、頑張ろうね!どうやらこれも切除した方が良いらしいが、切除してもまたできてしまって何度も尻にメスを入れている方もいるらしい。 私はそいつを暴れさせない独自の対処法を編み出したので今は上手く付き合っている。 まだ時々腫れる(どうも体調が弱っている時に腫れる傾向がある)が、引くのが速くなったしもう痛むことはほとんどない。

 と思ったら4年前、今度はそれと尻の割れ目を挟んで線対称の位置にまたプリっとひと粒できた。 ニキビ大だったのが今じゃあ何の因果かマッポの手先、もとい、手術したものよりひとまわり小さいくらいまで成長している。 これは痛くも何ともないので手術したものと同じだろう。 場所的にジャマになることもないのでこれ以上大きくならない限りは放置しようと思う。

 でも、このままのペースでできものが増えていったら私はどうなってしまうのだろう。 皆さんに気持ち悪がられそうで怖いが、実はこの夏、左の二の腕にも(それもたった一日で!) 「完成品」 と言えるほどの大きさのヤツができた。 70、80になったら全身突起物だらけなのだろうか。 わしゃ何かの滑り止めか。