紆余曲折の人生を歩んできたペと子が、これからアキバ系オタクのコラムを書いてくとのことだが、どんな内容になるのかは予想もつかない。ま、沖田×華同様、かなりワイルドなキャラなので、とにかくWebで暴れるだけ暴れて欲しいっス。つーことで、ペと子。お前の生き様を炸裂させたらんかいっ!!


「第十一回」


 特殊学級に通い続けてあっという間に3年生の夏になっていた。
その頃には受験シーズンが近づいてきたという事もあり、学校でも進路相談などが設けられ始めていて、私がいた特殊学級でも同様に進路相談をする時間があった。
 「これからどうするの?」という言葉に、同じ3年の子達は「弁護士になりたいっ」とか「109のショップの店員」とか、憧れる職業を答えていた。
 でも私は高校すら行く気持ちはなかった。行く気持ちというより、この先のことが何も浮かばなかった。
 だから素直に「高校には行かないで、週4くらいでバイトして、帰ってきたらテレビ見て、そんな感じで生活していきます」と答えた。それが穏やかで平和な生活だと思っていたのだ。
 今思うと、実に夢のない生活だと私は思うけど、これって今現在の子の「将来はフリーター」というセリフと同じなんだと思う。
どうしてそんな夢もなにもないような根も葉もない事を言うのかと思う人がいるけど、その頃の私の理由はこうだった。
 就職活動とか決まりとかが面倒くさいって気持ちも確かにあるけど、その頃の私はとにかく「もう誰かに苛められるような事が多いような競争のある仕事には就きたくない」という気持ちが一番大きかった。「とにかく私以外の人間はみんな自分勝手なのだ」と思い込んでいた。「誰も私の事を分かってくれない」と誰の気持ちも分かろうとしない自分が言っていたのだ。これは今思い出しても本当に怖い考えだったと思う。
 その後も「高校は行ったほうがいい」という特殊学級の先生の言葉に私は首を横に振り続けていった。

 だけどそんなある日、私にとって転機のきっかけとも思えるような事が起きた。
 当時中学に入学した時にはじめて飼ったハムスターが、朝起きたら自力で立つこともできずにゲージの中を這いずり回っていたのだ。
何かの病気にかかってしまったのだと思い、私は慌てて動物病院をタウンページ探したのだが、その当時はまだハムスターブームが起きる前のことで小動物を見てくれる病院が全然見つからなく、特殊学級へ行く時間になってしまった。
 でもハムスターを置いて登校することなんてできなくて、悩んだ末にキャリーに入れて特殊学級に向かった。
「病院探してるんですけど見つからないんです」
 ぼろぼろに泣きながら初めて先生に訴えた。自分は子供で無力で、そのとき精一杯病院を探したつもりだったけどみつからなくて、でも先生達大人なら何か知ってると思って縋るように聞いた。
 でも先生は箱に入れたハムスターを見て言った。
「もう死んでるんじゃない? それ」
 それを聞いた途端、ものすごい怒りが湧き上がった。
 聞いた私がバカだったと、そのままハムスターを抱えて自宅に帰り、その日以降勇気を出して通い始めたつもりだった特殊学級に行くのを辞めた。
 ハムスターは帰宅後にタウンページで探して電話をかけまくってようやく見つけた自宅から遠い場所にある小動物担当の病院の先生にどもりながらなんとか説明したら、電話で対処法を教えてくれた。
「温かくしてあげて、固形の餌をお湯で軟らかくしたものやフルーツをあげる。見ていないから分からないけど腫瘍も苦しむ様子もないなら寿命だと思うから、最後まで見守ってあげなさい」
 ただそれだけの簡単な方法だったけど、でもそのときの私にはお金も払わずにそこまで丁寧で教えて貰えたのがうれしくて、そしていろんなことに安心した。
 結局その後、ハムスターは数日で冷たくなってしまったけど、最後の最後まで一緒にいて見取ってあげることができた。
 また、あの電話をした時、病院の先生が最後にこんな事も言ってくれた。「ハムスターは感覚が鈍いから、苦しくてもギリギリまで分からないんだよ。辛いのも分かるけど頑張って傍にいてあげなさい」
 私はハムスターじゃないからあの子がどんな気持ちで亡くなったか分からない。でも、あの時の泣きじゃくった私の声を聞いて少しでも落ち着かせようとしてくれたのは今でもよく分かる。ありがたかった。
 だけどハムスターが亡くなった直後はやはり辛くて、泣きながら幼馴染に電話をしたら彼女はすぐに駆けつけてきてくれ、一緒にハムスターを埋めてくれた。

 そしてこの一連の出来事が私の中の考え方を少し変わらせてくれた。
 初めて人間の冷たさと優しさがどういうものか分かった気がした。
どもって何度も水を飲みながら緊張して電話をした、会ったこともない私に、丁寧に電話で対応して励ましてくれた獣医さん。それと顔を何度も合わせていた先生のショックで意外だった一言。
 どんな人にでも冷たい面や優しい面があるけど、中学生だった私にはそれがすごく衝撃的だった。
 考えてみれば色んな人がいるのだ。誰も自分のことを分かってくれないとそれまで私は言ってたけど、特殊学級で一緒に遊ぶ友達もできたし、ハムスターが死んだとき飛んで駆けつけてくれた幼馴染もいる。
 見えてるのに見えてなかったってこういうことなのだとそれからしばらくして理解した。
 特殊学級はもうあの先生を見ると怒りが沸いて来そうで行きたくなかったし、相変わらず中学には戻るつもりはなかったけど、でもこのまま家で一人はダメだと思ったし、何よりも一人で過ごすのはもう嫌だと思った。
「高校。行ってみたいかも」
 私は思い切って母にそのことを伝えた。すると母は喜んで「受験の事もあるから」と、家庭教師を派遣してくれたのだ。
自宅での相変わらずの引きこもり。そして母子家庭なのに個人家庭教師。
 生活的にさらに母を苦しませてしまって申し訳なかったけど、何かが変わる気がすごくして私は家庭教師がやってくる日をわくわくしながら待ったのだった。

つづく




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