「第十回」


  最初私は特殊学級というところには、イジメなどにあった不登校児ばかりがいるものだと思っていた。
 でも、実際に通ってみると様々な事情を抱えた子達が多い事を知った。

 まず最初に仲良くなった子は、一つ年上の兄と一緒に通っていた女の子だった。
 彼女は父親がアルコール中毒、母親が家庭内暴力をしているという家の子で、「友達になってくださいっ」と言われ、喜んで友達になった。
 だけど、仲良くなった途端ジャニーズの裸の切り抜きを何枚も見せられ「素敵でしょ?」と同意を求められて「全然」と答えたら次の日から話しかけてこなくなった。
 次に仲良くなった子は、「体が弱くて、学校に行きたくてもいけない子」だった。私と同じく漫画やゲームが好きな子で、趣味も同じですぐ仲良くなれた。
 ただその子は周に2日ほどしか学級に来なかったので、学級ではなく土日に互いの家に行って遊びあう友達になった。

 最後に仲良くなったのが毎日学級に来る2人の男の子で、私はようやく学級内の友達ができた事に安心した。
 1人は当時でいう今時系の外見をしたD輔という子だった。彼は中学2年生だというのに弁護士を目指し、いつも六法全書を持ち歩いていた。でも彼がこの学級にやって来た理由は、真面目な生徒が多い中学校の中で、彼がキレやすい性格だったため、先生や生徒達につまはじきにされてしまったという事だった。イジメというよりも敬遠されていづらくなってしまったらしい。
 もう1人は、どんなに頑張っても約束の時間を守る事ができず、いたたまれなくて特殊学級にやってきたS吾君という子だった。しかし彼は時間にルーズな癖に、変なところがネチっこく、ポテトチップスを食べた手でゲームのコントローラーを握ると、たとえそのコントローラーが私の私物であっても激怒する子だった。
 ちなみに私は、誰にでも都合よく接して愛想を振りまき、いつのまにかみんなから嫌われているタイプだった。
 中学生だというのに小学校3年の漢字もかけず、ついで掛け算は指を使わないとできないアホで、すぐ泣く弱虫。すべてにおいてダサさかったので苛められていた。

 そんな私とS吾とS輔の3人は、いつしか学級の外でも遊ぶようになっていた。
 ただ、3人ともそれぞれにダメなところがあるので色々と問題はあった。
 外で待ち合わせをすると、時間にとてつもなくルーズなS吾がかならず最後に遅れてやってくるのだが、以前公園で待ち合わせをした時、S吾が2時間も遅刻し、いつまで経ってもやってこないことにハラを立てたD介がマンションの壁に拳を叩きつけはじめた。それを見た私は、恐怖で泣き叫びながら彼の足をつかんで必死に止めた。
 結局S吾がやってきたときには、D介が拳を割って流血し、ようやく落ち着いて六法全書を眺め、そしてその横で私が恐怖でうずくまって泣いているという不思議な光景が広がっていた。

 また私達3人全員が、同じ市内の別々の中学校に通っていた。
 ちなみに私の通っていた特殊学級では、遅刻しようが早退しようが一瞬でも学級に顔を出せば、その日一日が中学校の出席日数として加算されていた。なのでよく昼ごろに3人で早退し、自転車に乗ってまだ授業中のそれぞれの中学をめぐって回ったりもした。
 中学校を門の外見上げるたび、3人のうち誰かがかならず「学校に行ってるやつらは毎日イヤでも勉強しなくちゃならないんだ、みじめだよなぁ」と言った。そして3人で校舎を見上げて、勉強しているであろう他の中学生を笑った。
 でも本当にみじめなのはどっちなのかはみんな分かっていた。だからこそ学校に行けない自分達を優位に立たせて、一瞬でもいいから安心したかったのだと思う。
 この時点で私が中学に行かなくなってから半年が過ぎ、ようやく友達ができたことへの安心感を持てはじめていた。
 でもやっぱり、自分は学校にもいけないつまはじき者だという気持ちは消えなかった。

つづく