「第三回」
 彼氏のRの意思を引き継いだ私は高校を卒業後、都内のゲームの専門学校に入学した。
 専門学校は想像していた通りオタクの人が沢山いて、皆口を開けばゲームやアニメキャラの話で、まともな会話などできず、私自身もクラスから「ヤクザの女」というあだ名をつけられていたので、授業以外で他の生徒と話すことは無かった。
 もう凄いのだ。
 その専門学校の生徒達のオタク度が。
 26、7の男が、母親に手をひかれて学校まで送り迎えをされていたり、授業中何かのアニメのポーズを決めたり、手首を切っちゃったり……。また授業内容は何万もする教科書になぞった発想方法などの、どう柔らかな頭で考えても実際にゲーム業界に行って役立つとは思えない勉強ばかりで、入学してすぐに私は後悔をし始めていた。
 そして、専門学校に入学して二週間ほど経ったある日、とある事件が起きた。
 彼氏のRが浮気をしていたのである。
 それも同棲をしていたアパートを1日離れたスキに、友達が紹介した女の子と一緒に布団の上でのプレイ真っ最中を目撃してしまい、挙句の果てRはそれは浮気ではなく、本気だと言うのだ。
 かくしてRともアッサリと別れる事になり、別れた彼氏の夢を背負った私に残ったのは100万チョットの学費の借金だけ。
 当然のごとく私は荒れに荒れた。
 とりあえず気に入らなかった年上の生徒にケンカを売って登校拒否にしたり、遅刻早退欠席を繰り返したりの好き放題をした挙句、学校に行かなくなったのだった。
 それからというもの、家にも帰らず友達の家に無理やり住み込んで、出会い系サイトのサクラをやったりしながら遊んで暮らし続けた。
 だけどしばらくしてその自暴自棄な生活のツケが回り、当時付き合っていた男性の関係で、私は弁護士を立て、警察の人達に数日間かくまわれるような事になってしまったのだ。当時流行っていたストーカーである。
 ストーカーは酷かった。自宅の電話に毎日のように脅迫電話がかかり、家に火をつけるとかヤクザを使うとか脅され、ついに自分の親にまで被害が及びそうになった私は警察の勧めで自宅で一ヶ月謹慎する事になった。
 だけども家にいても毎晩かかってくる脅迫電話。自宅前に車が止まるだけで心臓が跳ね上がるような恐怖感。それらから逃げる事なんてできなく、精神的にボロボロになった私は遺書を書き、ストーカーに殺されてしまった時の為に部屋を何度も掃除をするようになった。
 自分自身にも大きく非があるのは分かってたけど、悔しくて仕方なかった。
 そして思った。どうせ死ぬなら悔いなく死にたい。その為にはどうするか?
 一瞬、ストーカーを自らの手で殺すという選択が頭の中によぎった。だけどもそんなストーカー一人に人生を狂わせれるなんて真っ平ゴメンだった。
 そして次に浮かんだのは、ゲーム業界の事だった。結局最初はRの為に入ったと自分に言い聞かせていたけど、ゲームが好きという気持ちは変わらなかったからだ。
 かくして、安易な理由で再び私はゲーム業界を目指し、自宅に引きこもりながら独学でゲームの企画の勉強を始めた。就職活動用のゲームの企画書を作って沢山のゲーム会社に送り始めたのだ。その後色々ありながらもなんとか企画書が通りゲーム業界へと入る事になり、そしてそんな中文章を書く仕事にもつきたいと思い、書籍編集の仕事をしたりして、現在はフリーのライター&企画屋として生活している。
 私はこの間に沢山のオタクの人を見てきた。
 自分の目先の事しか考えられないオタク。大好きなものに囲まれて仕事をするオタク。心変わりの早いオタク。犯罪スレスレのオタク。アニメやゲームを愛するオタク。
 だけど、これらの人と出会ってきたからこそ、強烈な印象を受けて、私も頑張る事ができるのだと思う。

 以上が私、しみずぺと子がオタクに出会ってから今の仕事に就くまでのお話。
 ずいぶんと長い前フリになってしまいましたが、次回からそんな魅力あるオタク達の聖地秋葉原を中心にレポートを書いていこうと思っています。