| 第3回 『これが俺の芸風だ!!』 上島竜兵(竹書房) |
| 「できるなら、君の子供を産んでみたい」と名曲「オンリーユー」で歌ったのは田口トモロヲだ。そして「できるなら、君のウンコを食ってみたい」と願ったのはダチョウ倶楽部の上島竜兵だ。中学時代、上島は初恋の女性の検便を盗んで先生に叱られたのである。さすがに、実際に食べはしなかったらしいが。そうした素敵なエピソードが満載された、上島竜兵の自伝が『これが俺の芸風だ!!』である。 上島竜兵といえば「お笑いウルトラクイズ」、「お笑いウルトラクイズ」といえば上島竜兵というように、ダチョウ倶楽部が誇る芸能界のスカッドミサイル、上島竜兵の芸風を世間に認知させたのは「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」である。この番組で上島は「人間スカッドミサイルクイズ」で「逆バンジーでウド鈴木とともに空中全裸」、「人間性クイズ」で「故・ポール牧のホモセクハラに逆ドッキリで応酬」などと、現在でも語り継がれている数々の伝説を残した。その充実ぶりは、不世出のテレビ番組批評家、故・ナンシー関が「番組の中ですでに「さすがにダチョウ」「やっぱりダチョウにはかなわない」「待ってました! ダチョウ!!」という空気が出来ている」(『何様のつもり』角川文庫)と感嘆したほどである。 そのナンシー関も書いているが、番組に対する「出場者がかわいそう。いじめの温床となる番組だ」という批判を見事にはね返したのがモーターボートの舳先にくくりつけられ、爆薬の仕掛けられたセットへ突っ込むという苛酷な「モーターボートウィニングラン」のゲームの最中に、上島竜平が発した「これが俺の芸風だ!」の一言だったのである。本書のタイトルは、ここからとられている。当然のことながら本書中では、「ウルトラクイズ」エピソードも20ページに渡って語られているので、21世紀になって急速に消滅した、破天荒なテレビの笑いが好きだった人は、躊躇なく買い求めるべきだろう(ちなみに『ウルトラクイズ』総集編のDVDもまもなく発売されます)。 先の検便のエピソードは中学時代の話だが、作文を未来予想図と勘違いしていた小学時代、修学旅行をサボって自宅にこもり自分が出演する映画のポスターを100枚作ったという高校時代、青年座の入団テストを受けて“重いバケツ持って、犬に追いかけられる”というパントマイムの課題を「台詞入りでやってしまって」見事失格になった修業時代など、上島の雌伏期はとにかく涙が出るほど完璧なエピソードばかりである。ありがちな「いい話」というのが皆無で、実に潔い。 さらに、なんとか縁が出来てダチョウ倶楽部を結成すれば、当時のリーダーは現・電撃ネットワークの南部虎弾。これが深夜に突然電話をかけて「おまえビー玉飲めるか?」と 聞いてくるような奇人(というかキ○ガイ)だったので、大変だったという(電撃ネットワークの著書、『電撃伝説』によれば南部は若いころ「パリでボランティアをしながら芸術・演劇を見まくる生活」を送り、フランス語が堪能だというのだから、人間はわからない)。その南部が退団して3人になり、ようやくテレビの世界でも芽が出始め、ゴールデン初の冠番組「つかみはOK」に出演するも早々に終了。だが、同時にこれまた伝説のバラエティ番組「スーパージョッキー」にも出演し「熱湯、熱湯、熱湯、バンジー、また熱湯」という、芸人だかスタントマンだかわからない生活を送りながらダチョウ倶楽部はのし上がっていくのであった。 というわけで、その他にも「按摩器でオナニーを学習」といった素敵なエピソードでいっぱいの本ですので、後はみなさん実際に読んで楽しんでください。ちなみに本書にはダチョウ倶楽部が交流した芸人のさまざまな素描も紹介されているのだが、その中で印象に残るのが、片岡鶴太郎が「しゃべりでは、たけしさんや、さんまさんに勝てないし、コントでは志村さんに勝てない。このままお笑いやっていても、まぁ自分の未来がだいたい予想できる。俺たちはどこかでうまく方向転換していかないとダメなんだ」と語ったというエピソードである。鶴太郎はその後完全にお笑い方面からは「プッツン5」し、なんだかとんでもない方向に行ってしまったが、上島は「ヨゴレ」で「子分肌」という道を選択したわけである。どちらの生き方がかっこいいか、もう言うまでもないだろう。また、グラビアも充実しており、上島が豆絞りの手ぬぐいの正装に身を包み(というか本当に『身』だけを包み)飯田橋の外堀のボート上で花見に興じるという巻頭「竜ちゃん、踊る」や、汚い女装「竜ちゃん、舞妓になる」(襦袢だけで置屋にたたずむポートレイトが絶品)など、大橋仁撮影による溜息が出るほどに汚く、美しい作品が多数収められている。もちろん、全裸写真だって満載だ! ところで、本書にはもう一つ素晴らしいところがある。上島竜兵以外のダチョウ倶楽部メンバー、肥後克広と寺門ジモンの本性が垣間見える点だ。別個に話を聞いたと思しきインタビューがそれぞれ収録されているのだが、二人の性格がそのまま現れていて最高である。まず肥後は、徹底的な無責任ぶりを発揮。上島のさすがにこれはどうかと思うような下ネタエピソードを、人の本だからといってまったく惜しげもなく披露しまくっているのである。これまで紹介してきたように下ネタ満載の本書だが、はっきり言って肥後の語るエピソードがいちばんひどい。あまりに下品なので伏字で紹介させてもらいたい。 ――で、わあーっとみんなでプロ野球の優勝チームみたいにビールかけしてたら、誰かがビール瓶を○○○○に入れようって話をしたのかな、うん。(中略)逆立ちしている竜ちゃんの○○○○に誰かがビール瓶押し込んだらグイッと入っちゃって。半分以上入っちゃってるのよ、○○○○に。「うぉー」って、みんなビックリして引いちゃって(笑) 一歩間違えば大惨事だと思うのだが、リーダーは「やっぱり、人間の力ってすごい」「酒屋で売ってるビールの大瓶のこれぐらいのやつですよ。入るんですねえ(笑)。面白かったな」といたって呑気な感想なのである。(笑)じゃねえよ、リーダー。 で、もう一人の寺門ジモンがどうなのかといえば、これが徹底して空気を読まない発言に終始しているのである。スニーカーやオオクワガタなどの偏執狂的なコレクターであり、世界最強を自称するジモンの浮き上がりっぷりは浅草キッド『お笑い男の星座2 私情最強篇』(文春文庫)に詳しいのでぜひ読んでもらいたいのだが、本書でもメンバーの本への友情出演であるということを完全に忘却して浮きまくっている。それは以下の発言を読んでいただければ一目瞭然だろう。 ――俺は、竜ちゃんの本を出すことは面白いとは思わない。20年来の仲間だからって、客観的に物事を見てないとダメだからね。竜ちゃんのとらえ方というのを、ビジネス本的なラインでやれば売れると思う。ただ単にこういう事があったという回顧録的なモノにするのなら売れない。アイドルじゃないし、サラリーマンが見て“うわあ、だからこいつが光ったんだ”っていうのを見せてあげる事が売れる本だと思う。 本書のおもしろい部分は「こういう事があった」というエピソードの部分なのであり、エピソードがおもしろいというのはつまり上島竜兵の人間力のすごさを証明していることになるわけで、それを「ビジネス本的なライン」でやってもおもしろくなるはずがない。そこのところがジモンには完全に解っていないのである。そのマーケティング、駄目じゃん! なのに彼は「分かってる出版社なのかどうかは、俺は疑問に感じてんだけど」「ちょっと分かってねぇんだろうな」と厭味タラタラで「単にダラダラ面白話を書いちゃうんだろう」から「俺の話の中では、あえて単純な回顧録的な話以外を入れておきたい」とまったく求められもしない上島分析を披露する。それがもう「竜ちゃんは、人の付き合い方、人間に対する優しさ、人に対する見方を非常に重要視している」などと当たり前の話ばかりなのだ。この浮きっぷり、本の構成者がわざとやったとしか思えない。わざとでしょう、松永多佳倫さん。 というわけで、上島竜兵の人間力溢れるエピソードだけではなく、ダチョウ倶楽部メンバーの奇跡的なまとまりの無さをも暴露することによって、本書は完璧な芸人本となった。ちなみに以前、ダチョウ倶楽部のメンバーはギャラが完全に頭割りになっていて、単独の仕事でも三人でそのギャラを分ける、だから三人は仲がいいんだという話を聞いたことがあるんだけど、あれは本当なんだろうか。だとすると、この本のギャラも三等分するの? まったく本と関係ない話だけど、気になりました。 本書のお買い得度: 今なら、抽選で5名様が上島竜兵主催の飲み会にご招待してもらえる購入特典つき。飲み会メンバーは上島、肥後のほか(ジモンは下戸のため多分不参加)在京芸人さん多数だ、たぶん。場所は東高円寺「野武士」。飲み会費用(推定3000円くらい?)だって上島のおごり、のような気がする。やった、一食浮くじゃないですか。中央線沿線住人なら、迷わず本屋さんに走るべし。 |