ジョニーデップ邸

私、若い頃は『近藤真彦』に似ていた。
信じられない話しだが、誰がなんと言おうと、本当に似ていたのだ。カラオケで『マッチ』のモノマネをよくやった。これが、また自分で言うのもお馬鹿な話だが、よく似ていた。(な〜ん、本当ばい)
今はもう、やり尽くして(やり尽くされて)封印してしまったが・・・。

その後、『渡辺正行』に似ていると言われた。
コント赤信号の渡辺だ。急にランクが落ちた。まぁ、これも案外、似ているのだが・・・。

その後、水戸黄門の『飛び猿』に似ていると言われた。
筋肉番付でみた野村政樹はマッチョなところ以外はそっくりだった・・・。

その後、『ばってん荒川』(九州限定)に似てると言われた。
ホントだ! キタよ、これは。ジュワッと、濡れるぐらい嬉しかった。実際、似てるし・・・弟子入りしようかしら? とさえ思った・・・。

で、去年、板谷くんが福岡に来た時、私にこう言った。
「この前、テレビで綿貫(前)幹事長を見てて、俺、気付いたんだよっ! あぁっ! ハッチャキにそっくりだっ! って」
言われてみれば、ホントそっくりだ。鼻の下もちゃんと長いし・・・。もう私は、いつの間にかヨボヨボなのだ。

なんか、世の中には私に似てる人がたくさんいるなぁ・・・。いやっ、違うな。私に似てるんじゃなくて、私が似てるのか・・・。

くだらない事をダラダラと綴ってきたが、実はこれには訳がある。
なんと最近、近所の奥様連中に「ハッチャキさんって、ジョニーデップみたいですねぇ」と言われてしまったのだ。
「はぁ? ジョニーデップですか???」

ジョニーデップとは、『パイレーツオブカリビアン』や『チャーリーとチョコレート工場』などに出ている、あのアクの強いハリウッドの映画スターのことだ。
いくらなんでも、これは唐突すぎる。三本松さんを始めとする、全世界のジョニーデップファンに申し訳ない。勢い余って土下座したいくらいだ。

そもそも、近所の奥様連中の言う事など、だいたいはアテにならないのが定石だ。しかし、これはある意味、彼女達の生きる知恵だとも思う。「よその家の旦那は、とりあえず適当に誉めとけっ!」
これが、近所付き合いをスムーズにするコツなのだ。奥様連中は頭悪そうで、ホントは頭がいい。
だから、私なんかが無責任に「ジョニーデップみたいですねぇ」などと言われてしまう。ちっとも似てないのに・・・。

まぁ、とりあえずのホメ言葉には違いないので、不本意ながら、ここはチャッカリ受け取ってしまおう。でも、どんな風に受け取ろうか・・・。

とりあえず、うちのマンションの表札を『ジョニーデップ』と手書きして、差し替えてみた。これで、しばらくは近所の奥様連中に楽しんでもらえるだろう・・・。

2週間後・・・
この『ジョニーデップ』の表札は奥様連中には、かなりの評判だった。私は気分が良かった。こんなんで、笑ってもらえるのなら楽なものだ。だが、これが原因で、逆に困った事も起き始めていた。時々やって来る、宅急便のお兄ちゃんから、これでもかっ! っていうくらいジロジロ見られだしたのだ。

本物のジョニーデップが、博多区の築20年もするボロいマンションに住んでいる訳はない。じゃあ、どんな奴が出てくるんだろう・・・。誰だって、そこの住人に目が釘付けになって当たり前だ。気持ちは分かる。分かるが・・・私は少なからずも閉口していた。

「受け取りのサインお願いしま〜す」
クロネコヤマトの兄ちゃんが、いつものように私をジロジロ見ながら言う。
(ああっ・・・またかよっ! そんなにこの俺が珍しいかっ! そうたい・・・俺が自らをジョニーデップと名乗る、ナルシストの勘違い野郎たいっ! なんか文句あるとかーっ!)

あんまり見られるんで、ボールペンを受け取り・・・
『デップ、まじで』と書いてやった。
兄ちゃんはそのサインをジーッと眺め・・・
「あっ、ありがとうごがっ、ざいますっ」と、ちょっとカミながら、逃げるように帰って行った・・・。
意気地なしのこの呪い猫がぁーっ!
「そこは、突っ込むとこやろーがぁぁぁっ!!」

私はちゃんと、クロネコさんが突っ込んでくれるまで、ジョニーデップになりきる事にした。
そう、博多のジョニーデップにね。


                      <おわり>





ようこそ、ジョニーデップ邸へ。



ジョニーデップ流にもてなす私。
ホクロを付けたら、ばってんさん。スーツを着たら、綿貫さんにもなれる。