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【第二回 はじめに2 〜その日〜 】
ゲッツ板谷の書いた一本のコラム。それが全ての始まりだった。
それまでの僕は「すげえデブ」、「彼女がいない」など、様々な悩みを抱えてはいたが、それなりに楽しく平穏な日々を送っていた。そんな生活がずっと続くと思っていた。
その日も家に帰る途中、僕はいつものようにコンビニに立ち寄り、いつものように何冊かの雑誌を立ち読みした。
最後に手に取ったのが「パチンコ必勝ガイド」。最新機種情報やスーパーリーチの信頼度にはたいして興味が無いので適当に読み飛ばし、お気に入りのゲッツ板谷のコラムへ。『化粧』というタイトルだった。
「オレには、もの凄く暗い過去が一つある。」
そんな書き出しで始まる『化粧』。簡単に説明すると、映画『ブレイクダンス』の主人公、オゾンに憧れたゲッツ板谷が「オゾンになろう!」と決意。ダイエット、ブレイクダンスの練習、オゾンと同じ服装をするなどの努力をした挙句、最終的に「化粧」する事によって100%オゾンになる事に成功。が、それも束の間、すぐにブクブク太り始め、さらに汗で化粧が落ちて、すれちがった人に悲鳴をあげられ、そのショックでオゾンを引退する、そんな内容だっ
た。
別になんて事はない。「ゲッツ板谷って、昔からこんなバカな事してたのかよ!」とゲラゲラ笑っておわり、の文章である。
だが、僕にとっては「ゲラゲラ笑っておわり」どころではなかった。
僕にも似たような過去があったのだ。
十数年前、僕も映画『ブレイクダンス』に夢中になっていた。さすがに「オゾンになろう!」とは思わなかったが、ブレイクダンスの教本やビデオを買って、一人で練習していたのだ。
当然、本やビデオで簡単にマスターできる訳もなく、すぐに挫折、というか飽きてしまった。以後はダンスに興味を持つ事も無かったが、『ブレイクダンス』は、そんな思い出と共に、心の片隅にしまわれていた。
その『ブレイクダンス』を観てオゾンになろうと思い、一度は成功(?)した奴がいる。しかも、それがオゾンとは似ても似つかない、「水デブ」、「お肉ちゃん」、「チンコのついたサツマイモ」のゲッツ板谷なのである!なんとも言えない衝撃を味わった僕は、普段はあまり買わない「パチンコ必勝ガイド」を、買い物カゴに放り込んだ。
家に帰り、もう一度ゆっくりと「化粧」を読んだ。
僕と同じ映画に夢中になり、僕と同じ様な事(レベルは桁違いだが)をしていたゲッツ板谷。今まで「マンガに出てくるキャラ」、「バカバカしいコラムを書く奴」でしかなかった彼が、ちょっとだけ身近な存在に感じられ、なんだか嬉しかった。久しぶりに『ブレイクダンス』を観たくなった。ずいぶん昔の映画だけど、まだレンタルしている店があるか、探してみようかな。
ゲッツ板谷の書いた一本のコラム。それが全ての始まりだった。
でも、この時点では何かが始まるなんて思っちゃいなかった。
(続く)
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