【第三回 はじめに3 〜オゾン〜】


 『ブレイクダンス』1984年製作。スターを夢見るジャズダンサーのケリーが、ストリートダンサーの二人組オゾン&ターボと出会い、三人でチームを結成。敵チームとのダンスバトル、意見の衝突、恋のもれなどの様々なトラブルを乗り越え、斬新なブレイクダンスでミュージカルのオーディションに挑むという物語。
 全編に渡ってブレイキング、ジャズ、ロッキング、ポッピングなど、あらゆるジャンルのダンスが繰り広げられ、公開当時はブレイクダンスブームを巻き起こした。ダンスの場面では当時流行し始めたラップが使用されていて、少年時代のエミネムがラップを始めるきっかけとなった映画としても有名。公開から20年近くが経過した現在も、世界中のストリート系ダンサーやラッパー達に愛され続けている。

 ゲッツ板谷のコラムを読んだ数日後。久しぶりに『ブレイクダンス』が観たくなった僕は、レンタルビデオ屋を何軒か回ってみた。
ようやく見つけたビデオは十年以上前に発売されたもので、画質はひどいものだったが、そんな事は関係無かった。オープニングのテーマソングが流れた瞬間、僕の胸は懐かしさで一杯になった。

 ありきたりで単純だが熱いストーリー。オゾンやターボをはじめとするダンサー達の素晴らしいダンスの数々は、昔と変わらず僕を夢中にさせた。悪役フランコの妨害にもめげず、オーディションに挑むオゾン、ターボ、ケリ−。そしてクライマックス、オーディション会場でオゾンが踊り出すと同時に、再びテーマソングが鳴り響く。僕が一番好きなこのシーンでは胸がゾクゾクし、鳥肌が立った。すげえなあ。やっぱりオゾンはカッコいいなあ。ゲッツ板谷が憧れるのも当然だよ。だってカッコいいんだもん。

 映画を観終わると、なんだか急にしんみりとした気分になった。
 この映画に夢中だった頃、十数年前の僕は、自分で言うのもなんだが筋肉質で引き締まった体形だった。それが今では身長170センチ、体重100キロのおすもうさん体形である。

 エネルギッシュで華麗なダンスのオゾン。まるで機械仕掛けのように不思議でシャープなダンスのターボ。「純度100%のオゾン」になったゲッツ板谷。そして十数年前の自分。それらが次々と頭に浮かんで、しばらくの間ぼんやりとしていた。

 あの頃の僕は、何になりたかったんだっけ?「体重100キロの見苦しいデブ」ではなかったはずだ。腹の肉をつまんでみた。分厚い皮下脂肪。あの頃の僕が今の僕を見たら、一体どう思うだろうか?

 とりあえずダイエットしよう、そう思った。この肥満体ボディとお別れするのだ。とりあえず。話はそれからだ。

 別に、ものすごい事をしようと思ったわけじゃない。
 ちょっとでもマシになろうと思っただけだ。ブクブクに太った自分の体を、その体に慣れてしまい、諦めかけている自分の心を、ほんの少しでも変えたかった。それだけだった。最初は。

                          (続く)