【第六回 はじめに6 〜ジョニー〜】


 夏になると、僕の生活は更に大きく変化していった。

 まず、11月に行われるダンスの発表会に出場する事になり、通常レッスンに発表会のリハーサルが加わって、毎日のように「BE−ALL」に通うことになった。

 さらに、とある格闘技の道場に月に数回通うことになった。その稽古もかなりハードであり、おまけに家から道場までは、片道2〜3時間もかかるのである。道場に行った日はハンパじゃなく疲れた。

 その道場まで車で行くと、立川の近くを通る事になる。ここがゲッツ板谷の住む街か、などと思いつつ通過していたのだが、ある日ふとジョニーの店「PUSH UP」を覗いてみようかと思った。
 ゲッツのコラムによく登場するジョニーに興味があったのはもちろん、ヒップホップ系の服が沢山あるという事なので、ダンスに使える服があれば一石二鳥だと思ったのだ。

 そんな訳である日の道場帰り、立川駅近くに車を停めて「戦力外ポーク」に載っていた住所を頼りにジョニーの店を探してみた。が、30分程探しても見つからないので電話をしてみた。
 出たのはどうやらジョニー本人らしい。「今ドコにいるの?マクドナルドの前?OK、近いから迎えに行くよぉ〜」
 数分後、ニコニコしながらやって来た、ボブ・サップをふた回り小さくしたような男。店へ向かう途中、彼はいきなり、「もしかして、イタヤさんのファン?」と尋ねてきた。はい、と答えると、ジョニーは更に嬉しそうにニコニコと微笑んだ。

 店に着くなり、「ちょっと休憩ネ」と、缶コーヒーを差し出され、テレビを見ながら色々と話をした。ジョニーは最近引っ越したばかりで、その新居が偶然にも僕の家から10キロ程しか離れていないということが判り、地元話で盛り上がった。

 その後店内の商品を一通り見て、良い感じのシャツとパンツを購入。帰ろうとすると、「近道知ってるから、教えてあげるよぉ〜」と言われ、ジョニーの先導で帰る事に。家の近くまで来たので右折車線に入り、一番左の車線にいるジョニーに手を振ると、ジョニーは突然車を降り、僕の車のそばまでやって来た。

 驚いている僕に向かって、「今日は来てくれてありがとう。また来てね」と右手を差し出し、握手すると自分の車へと戻っていった。いつ信号が変わって危険な目に遭うかも知れないのに、わざわざ礼を言うためだけに三車線ある国道を横切って歩いてきたのだ。

 それ以来、僕はジョニーの店にちょくちょく通う事になった。


                         (続く)