|
【第七回 はじめに7 〜初舞台〜】
ゲッツ板谷のコラムに度々登場するジョニーが経営するHIP−HOPウェアーの店「PUSH UP」。初めて行った時にジョニーの人柄に魅せられた僕は、月に何度か同店を訪れるようになっていた。特に何をする訳でもないが、仕事にダンス、格闘技と忙しく動き回る中で、ジョニーと一緒に過ごすダラダラとした時間は、僕にとって非常に心安らぐ、大切な時間だった。
10月のある日、道場帰りに「PUSH UP」に寄ると、ジョニーは一人でテレビを見ていた。しばらくの間、一緒にテレビを見ながら他愛も無い話をしていたが、何気なく発表会に出る事を話すと、途端にジョニーのテンションが上がった。
「ステージで踊るの? スゴ〜イ! ワタシ絶対観に行くよ!」
「えっ? い、いや、ただの発表会だし、わざわざ観に来るほどのもんじゃ……」
「スゴイよぉ〜! 観に行くよぉ〜!」
こちらの予想を超えるはしゃぎ振りに少々うろたえたが、本当に来ると言うので後日チケットをプレゼントした。
ジョニーが楽しみにしてくれるのは嬉しかったが、同時に大きなプレッシャーでもあった。なにしろ人前で踊るのは生まれて初めてなのだ。自分自身、まだ人に見せられるようなレベルじゃないし、発表会自体も、ダンスに興味が無い人が見たら退屈じゃないだろうか、などと考えたりもした。
とは言っても、本番まではあと僅か、クヨクヨ考えていてもどうにもならない。とにかく一生懸命練習するしかなかった。
そしてむかえた発表会当日。会場は小さなライブハウスだが、200人以上のお客さんで一杯になった。その中にはもちろんジョニーの姿もあった。
僕の出番はオープニング、エンディングの他に4曲。ブレイクダンスの時には、「PUSH UP」で買ったシャツを着て踊った。他にはディズニーの曲で踊ったり、マイケル・ジャクソンに扮したりと、バラエティ豊かというか、ハチャメチャというか、そんな内容だった。
失敗はたくさんあったし、お客さんの反応を気にしている余裕も無かったが、なんとか無事にエンディングを迎えることが出来た。最後まで楽しく踊る事が出来たので、自分としては大満足。指導してくれた先生たち、一緒に踊った仲間たち、見に来てくれたお客さんたちに感謝の気持ちで一杯だった。
終演後は出演者全員がロビーに出て、見に来てくれた方に挨拶。友人と話していると、ジョニーが客席から出てきて、ゆっくり近づいてきた。そして何も言わずに僕の事を抱きしめた。
女の子がいっぱいいる中で、図体の大きい男二人が抱き合っている姿は、傍から見ると異様な光景だったろうが、とても嬉しかった。ダンスを始めて、そしてジョニーと出会えて本当に良かった。心からそう思った。
(続く)
|