【第十八回 第二部8 〜進路指導〜】

 三年になっても、僕と牧野君は相変わらず映画館通いを続けていた。
 この頃には、番長グループは他校の不良とケンカしたり、暴走族の予備軍になったりと忙しいらしく、同級生を苛める事もなくなっていた。
 それでも僕らはなるべく番長たちと顔を合わせないよう、校内ではいつもビクビクしながら過ごしていた。

 しかし、それもあと少しの辛抱だ。卒業すれば、もう番長たちとは会わずにすむのだ。中学の三年間は番長たちのおかげで酷いものだったが、高校生活は平穏に過ごしたい。そう考えた僕は、慎重に志望校を選ぶ事にした。

 その結果選んだのは、これといった特色は無いが、学区内で一番不良の少ない県立E高。レベルも中の上といったところで、仮に番長グループの連中が受験したとしてもまず受からないはずだ。番長たちのいない高校生活、考えるだけで夢のようだった。

 志望校も決まり、迎えた最初の進路指導。僕が生徒指導室に入ると、正面に座っていた担任の上田先生はちらりと僕を見上げ、すぐに机の上の書類に目を落とした。

「K(本名)は…県立のN高と、私立のS高でいいな」

 上田先生はそれだけ言うと、話は終わったから出て行け、とでも言いたげな目で僕を見た。いや、実際にそう言ったのかもしれないが、あまりに予想外な事に呆然としている僕には聞こえなかった。

 県立N高は、学区内で二番目にバカで一番不良の多い公立高として有名で、番長グループからも何人かは受験するはずだった。

 私立S高は、自分の名前が漢字で書ければ合格、いやひらがなでも大丈夫らしい、と冗談のネタにされていた高校。しかも学区内では僕の家から最も遠く、バスと電車を乗り継いで片道二時間近くかかるのだ。

「あ、あの、E高を受けたいんですけど…」
「E高?無理だよ。N高とS高な」
そう言うと、上田先生はにやりと笑った。まるで僕を小馬鹿にするように。

 
(続く)